トネリコの材面になにやら褐色の斑紋が散らばっています。拡大してよく見ると樹皮の断片が材料の芯のほうまで不規則に巻き込まれています。これは「入り皮」といわれる現象で、ふつうなら忌み嫌われ商品としては欠点でしかなく、ほとんど売り物になりません。ところがこれだけ派手に入り皮が入っていると、これはこれで見方ひとつ変えればじつにおもしろい希有な材料に思えてきます。
トネリコはモクセイ科の落葉広葉樹ですが、そもそも国産のトネリコが木工の材料として出回るのは珍しいと思います。私自身は初めての出会いです。そのうえにこの材料には全面に縮み(英語ではカーリー)と入り皮が加わっているではありませんか。で、思い切って購入しました。大きさは厚み37~38mm、幅16~31cm、長さ204~213cmで、2枚は共木です。写っているのは全体の約4割くらいでしょうか。
節や虫食い、変色などがなく、反りやねじれなどもない素直な材料は、もちろんきわめて貴重な材料ですが、そういう高級材はじつは加工するのもわりあい楽なのです。できあがった製品もまず誰が見ても立派だきれいだと認めてくれるでしょう。それに比べると、この入り皮だらけの材料はなににどうやって使ったらいいか、ちゃんと加工ができるのか。無事に完成したとしても自分以外のどれだけの人が気にいってくれるのか。難問がたくさんあります。