一見したところただの角材や木製ブロックのようですが、さにあらず。では薄板をくみあわせてこしらえた指物(さしもの)の箱かというと、それでもありません。ウォールナット変杢長方形被蓋くり物(〜かわりもくちょうほうけいかぶせぶたくりもの)です。
材料的には縮み(カーリー)ともキルテッドともいえない、濃淡のかすり模様というおもしろいウォールナットです。厚みは素材で51mmありました。その厚板を40mmほど彫り込んで蓋にしました。身(実)のほうも同じです。被蓋箱物に仕上げた状態で幅162mm、奥行83mm、高さ49mmです。各部の残った厚さはそれぞれ5~6mm程度。もっと薄くすれば見栄えはいいかもしれませんが、強度的にこれが限界かな(とくに木口側)と思います。
6面すべてが平面で、角も0.5mm程度の糸面しかとっていませんので、ぱっと見にはごくありふれた指物のようでいて、じつはよくよく見ると木目が木口面までみな連続している。そのことに気づかれて驚かれる方が少なくありません。内面も完全に平面のみで構成されていますので、製作はまずまず困難な部類といっていいと思います。
ウォールナットという、広葉樹としては中庸の硬さで刃物の切れがよいことや、靭性があって丈夫で粘りのある材料だからこそできる細工ともいえます。材料はなんとか2個分とれましたので、写真の品とほぼ同様のものをもう一箱後から製作しました。