この前も書いたように、当工房ではホゾ組は外まで貫通させてクサビで締めることが多いのですが、後でそのホゾの頭を1〜2mm程度残して切り落とします。あるいは抽斗内部や背板や駒止の駒などをステンレスの木ネジで止めてから、その下穴に打ち込んだダボ(短い丸棒)の余分を切り落とします。その際に活躍するのが写真上の鋸(のこぎり)です。
下方の鋸が通常のもので、ごく薄い鋼に7寸目くらいの細かい刃が刻んであり、そのままではへなへなしすぎるので身を厚い丈夫な背金で押さえています。替え刃式ですが良く切れるので、30年以上前からこの手の鋸を細かい細工によく使用しています。写真のものはレザーソー工業というメーカーのレザーソーという製品です。玉鳥というブランド名のほうが有名でしょうかね。
それで切れ味がすこし鈍ってきた鋸刃を上のように短く切断し、合わせて背金と柄も半分くらいまで詰めました。クサビの頭やダボの頭をカットするときに空間的な余裕がなく、下のようなふつうの既製品の鋸ではつかえてしまってうまく切れないときに使います。見た目は文字通り寸詰まりで不格好ですが、重宝します。もちろん「ダボ切り」などと称する小振りな鋸も売られているのですが、自作で間に合うのならそれにこしたことはありません。
ダボなどには接着剤を併用することも多いので、細工用の本来の鋸をその接着剤で汚したくないという理由もあります。付着した接着剤は、鋸身を背金からはずして丸ごとしばらく水に浸けておけば、酢酸ビニールエマルジョンなどの水溶性接着剤ならきれいに落ちてしまいます。鋸を水に浸けるなどという非常識なこともいわゆる「廃物利用」なら平気です。もっともレザーソーの刃自体がもともと錆びにくいようなコーティングが施されているのですが。