材料置場でクロガキ(黒柿)をチェックしつつ他の材料も整理していました。その中にめちゃくちゃに虫に食われたヤマザクラの板が一枚ありました。工房に持って行って、ぼろぼろの樹皮を取り去ってみると、虫が食った跡が中からきれいに現れてきました。
まるで迷路といった感じですが、これはこれでずいぶん面白みがあります。まさに自然が成す不思議さのひとつで、樹皮の表面と材木との薄いわずかな隙間を虫が縦横無尽にすすんで、樹皮のほとんどと白太のまだ比較的やわらかい部分をすこしかじったようです。こういう材料は望んで得られるものではなく、まったく偶然の産物。製品にへたに使えばキッチュ、ゲテモノ趣味にしかなりませんが、上手く使えばもしかしたらとびきり魅惑的なものになるやもしれません。
微細な木屑(つまり虫が食んでその腸を通過した糞か?)をタワシでこすり落とし、穴に詰まったものをエアブローしていたら、なんとその穴から幼虫が3匹出てきました。写真の右上に見えている白いふたつの物体がそれです。これはカミキリムシの幼虫で、俗に鉄炮虫と呼ばれるやつですね。身体はフニャフニャでひどく柔らかいのに頭部だけは硬く、その強力な顎で木を噛み砕くんですね。すごいです。
幼虫は工房の石油ストーブの上に置いてあぶって食べてみました(野放しにはできませんからねえ)。こうばしくておいしかったです。