真冬の高瀬峡 4

1月21日の高瀬峡探訪の4回目です。春から秋までの無雪期に高瀬峡をおとずれたことのある方はおおぜいいると思いますが、ここのハイキングコースの大きな魅力のひとつが滝の観賞ですね。

ヒノソにかかる第一吊橋を通り、すこし行くと道が直進と右折に分かれています。右に曲がり湧水100%の二ツ沢の小さな橋を渡るとほどなくまたヒノソが見えてきます。いつもだとそのあたりから木陰の向こうに蔭ノ滝の落水がちらりと見えるのですが、今回はただ真っ白の雪の斜面が見えてくるばかり。そうです、水は表面にはまったく流れていませんでした。滝壺にはほんのわずか水面が残っており、滝のいちばん下の雪塊のかげからごく細い水流が落ちているだけです。これまで数えきれないほど眺めた蔭ノ滝ですが、今度がいちばん涸れた状態でした。ちなみに「涸滝」は俳句でも冬の季語になっています。

2枚目はバンバ沢(婆々沢)です。第二吊橋のかかるこの沢は、ごらんのとおり湧水の割合が多いので、真冬でもしっかりと流れています。ただ主要な水源の湧泉は1km以上上流域にあるので吊橋下の表流水の温度は4.9℃でした。もっとも二ツ沢のほうは蔭ノ滝に向かう橋のところで2.7℃でしたから、バンバ沢には私が未確認の湧泉がもっと近いところにもあるのかもしれません。

バンバ沢という名前は姥捨伝説由来のようで、第二吊橋のすぐ下方には由蔵滝と婆様淵があります。つまり由蔵さんが婆さんを背負ってここまできて婆様淵に投げ捨てた云々という話です。しかしながら庄内地方は基本的に自然災害が少なく食資源が豊富なところで、天明その他の大飢饉でも人が人を食らうほどの極度の飢えはなかったということなので、おそらく根拠のない風聞といっていいと思います。

3枚目は由蔵滝よりさらに下流の薬師滝かと思います。遊歩道がカラ沢(唐沢)との間のやせ尾根にあがり、そのまま尾根をやや下ってコンクリートの柵があるあたりから見下ろしています。板状節理の急崖を直瀑が勢いよく落ちていますが、夏場は草木の陰にかくれてよく見えません。葉が落ち草が枯れた時期ならではの姿といえます。由蔵滝も薬師滝も滝の直前に至る道がないわけではありませんが、かなり急な踏跡程度の荒れた道なので危険です。万一を考えてザイルワークでも駆使できる人以外は近づかないほうがいいでしょう。

 

 

 

さて高瀬峡の核心部ともいうべきカラ沢です。遊歩道はバンバ沢の左岸にもまして急で長い斜面を高度差50m近くジグザクに降りて行きます。小さな雪崩の跡(デブリ)がたくさんありましたが、ここ数日雪が降っていませんし落ちる物はみな落ちてしまい今はそれなりに安定したようすです。夏道に忠実にではなく、地形をみながら慎重に下っていきました。新しくあつらえたナイロン製のカンジキが好調です。雪深い急斜面などはカンジキなしではとても降りられるものではありませんから。

降りるに連れて対岸(カラ沢右岸)に滝がはっきりと見えてきます。剣龍ノ滝です。水量は多くはありませんが湧水だけからなる滝で、60〜70度くらいの崖を白々と流れ下っているさまはいつ見てもすてきです。まさしく天に昇る龍のようですね。滝の落差は30m余りでしょうか。水量は年間ほとんど差がないように思います。滝の最下部で水温は8.3℃、気温2.9℃でした。カラ沢のほうは4.8℃です。湧出口はいちばん上のバンド(帯状の岩盤)とその下の地層との境界にあり、大小二筋の滝になっています。縦長の写真はその左のほうの滝のほぼ全貌ですが、次の写真は滝がカラ沢に落下するところ、最後はその地点から滝最上部の湧出口を見上げたところです。一面に苔むしているのはそれだけ安定して湧水が流れている証拠です。

 

 

 

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