もう終わってしまいましたが、先月23日から29日まで酒田市の清水屋デパートの画廊で、十川眞紀さんの個展が開かれました。十川さんは酒田市在住の織り作家で、とりわけモダンタイプのタピストリーでは第一人者です。写真はそのときのダイレクトメールで、きびそ(生皮苧)という絹の糸を用いたタピストリーの一部を拡大したものです。
きびそは蚕の繭のいちばん外側の部分の糸、つまり蚕が最初に吐き出す糸で、太さが不揃いなために一般には品質の劣るものとして用途も限られます。しかし逆にそのランダムな風合いがおもしろいということで、それをうまく活かしてタピストリーやバッグやショール、マフラーなどを作られています。
ギャラリーにはフェルト製のバッグや帽子なども飾られていましたが、私自身はやはりタピストリーがとても見応えがありました。モチーフはいずれも太い十字=クロスを繰り返し展開したもので、白や黄や赤など、基本的な色合いもさまざまでしたが、なかでもDMにも使われた黄緑色のタピストリーがいちばん私は気に入りました。ゆるやかなグラデーションを描く地の中に浮かぶクロスが、春先に萌えいづる草の芽のようでもあり、幾何学的パターンの非常に現代的なコンセプチュアルアートのようでもあります。いいなあ〜。