きのうで終わってしまいましたが、山形県庄内町の内藤秀因水彩画記念館で開かれていた「阿部智幸水彩画展」を見に行ってきました。草原や樹林、河川や道端の景色、雪景色などを、じつに細密な筆致で描いてありました。それこそぱっと見た目には写真かと錯覚してしまうほどのリアルな描写です。
枝葉とか路面・雪面の微妙な輝きを忠実に再現しているかのように見えて、じつは言うまでもなくそれはあくまでも絵画として翻訳されているもの。絵の才能のとぼしい私には、いったいこれはどうやって描いたんだろうかと不思議に感じるほどの驚きがありました。うまいとかどうとか以前に技術的な差異にうちのめされてしまいそうです。きっと細い面相筆でものすごい時間をかけてかき込んだのだと思います。
ただ30点ほどもある作品をたんねんに2回りして観賞したのですが、とてもすばらしい絵だと思いながらも、その一方ではそれなら自分の足と目で実際にその草木や野山を体験したほうがもっといいとも思い直しました。さいわいそれが簡単にできるような環境や条件を私は持っているわけですから。自分がもっと歳をとって容易には外に出られなくなったり、今後そういうことはないとは思いますが都会の真ただ中で暮らすようになったときには、こうした具象的な自然風景の絵にひどく惹かれるようになるのかもしれません。
内藤秀因水彩画記念館は庄内町図書館に併設されているものですが、館名でもある内藤氏の水彩画もまたぜんぜん違った筆致ながら魅力的でした。