当工房の定番的な椅子。背もたれがやや高めにできているのでこの種の椅子はハイバックチェアと呼ばれています。寸法は幅440mm、奥行450mm、高さ870mm、座面高380mmです。材質はクルミ(オニグルミ)です。
デザイン的にはごくスタンダードなもので、座面は完全フラット&水平、背の傾斜もそれほど強くありません。座の高さも市販の一般のものよりすこし低めにしてあるので、ダイニングテーブルやデスクなどどんな用途にも対応できると思います。テーブル類の甲板高さは標準として650mmを想定していますが、ご注文で作る場合はさらに低く620mmくらいまで下げることがあります。椅子の座面もそれに合わせて低くします。
特徴としてはホゾを相手の外まで貫いてクサビで締めてあることです。また外観からはまったく分かりませんが、主要部分は「大入(おおいれ)」といって入る側の断面全体が相手側に2〜3mmほどくいこんでいます。また座板を受け、脚同士をつなぐ幕板は当然として、それ以外に幕板の下方でももう一段「貫(ぬき)」で脚同士を結んでいます。
現在では、貫がなくて幕板のみで締結してある方式の椅子が圧倒的に多いですが、当工房ではこの椅子だけでなく原則としてそのような方法は採りません。金属製ならともかく木製で「一点接合」は強度的に無理があると考えるからです。コの字ではなく最低でもロの字型で組む。座る人の体格はさまざまで、みながみな静かにそっと座るとはかぎりませんから。
その結果みた目にはいわば下半身がやや重く感じられるかもしれません。しかし椅子はなによりもまず生活の基本的な道具ですから、みてくれよりも機能性と耐久性がいちばんです。外目の美しさももちろん大事ですが、それは二番目以降の話です(両立できればいちばんですが、かなりの難問)。おそらくこの椅子なら災害にでもあわないかぎり数十年から百年くらいは保つでしょう。オール無垢材でホゾ組ですから、万一の場合の補修もききますし、使い込んでいくことによってまた別の魅力をましてくると思います。
むろん使い勝手や耐久性を多少そこなっても美観を追求することがあってもいいとは思います。手作りの家具の工房も、全国的にはたくさんあって、椅子をメインの家具にすえている工房も少なくありません。何を重視するかは実際いろいろで、お客さんはその中から選択すればいいだけですね。