エンジュの輪切

 

子どもたちの手製のペンダント用にエンジュの枝を輪切りにしたものです。これに水性のマーカーで絵を描いてラッカー塗装し、紐をつけます。輪切りした材の大きさは厚さ約1cm、直径5〜6cmで、合計251個あります。当工房では材料の供給と、子どもたち(幼児〜小学生)が作るのをいくぶんかサポートします。

エンジュはマメ科クララ属の落葉広葉樹です(Sophora  japonica)。中国原産ですが、なぜか学名はジャポニカになっていますね。我が国には庭木や街路樹としてかなり古い時代に渡来。しかし植物図鑑で調べてみると、エンジュによく似たイヌエンジュがあり、こちらはマメ科イヌエンジュ属で、日本固有種です(Maackia  amurensis)。輪切りにした枝は、ずっと昔20年以上も前に他の材を購入した際におまけみたいな感じで分けてもらったものなので、果たしてエンジュなのかイヌエンジュなのか定かではありません。

いずれにしても心材が黒褐色、辺材がクリーム色と、非常にくっきりと色が別れていて、そこがとても個性的です。そうした特徴をいかしてろくろ細工や床の間の柱などによく用いられます。材質は緻密・強靭で、乾燥による割れも生じにくいです。でなければこんな枝を輪切りにして工作などできません。

これに紐を付けるのですが、難問がひとつありました。ただ紐を固定しただけでは、万一の場合「首つり」にならないとも限りません。最近はそうした事故を避けるため、市販のボールペンやネームなどでも一定以上の強い力がかかると紐が分離するような専用のバックルが採用されています。万一の場合は外れる、しかし通常の使用状況では外れることはない=下げていたものが落下して壊れたり紛失することはない、という微妙なコントロールを、専用のセーフティバックルを使わずに他の方法で実現するのは難しいです。

がっちり紐を結ぶのではなく瞬間接着剤で付ける、部分的に細い紐の箇所を作っておく、といった方法を試してみましたが、瞬間接着剤は接着力の弱い側のコントロールが至難で、また小さい子どもたちが扱うには瞬間接着剤は危険もあります。紐の一部に切れやすいようにわざと弱い箇所を設けるというのも、意外に細工がめんどうなことと見栄えがわるい。セーフティバックルの部品だけをたくさん仕入れるという方法もあるでしょうが、その予算も時間的余裕もない、……。

結局、さんざん試行錯誤したあげくステンレスの針金で径6mmほどの小さなリングを自作することにしました。まん丸ですが溶接されてなくて切れ目のあるリングです。強い力がかかるとリングの口が開いて紐やチェーンが分離する仕掛けです。市販のネックレスなどはみなそのような作りになっていますね。これもパーツとして売られているのかもしれませんが、今回は自作です。針金の太さとリングにした場合の直径はどれくらいが適当か、どうしたら簡単にきれいな円形にできるか。これも何度もためしてみて決めました。

紐を本体に締結するのも、普通にネジ止めの金具を使うのでは当たり前すぎるしカッコわるいので、オリジナルな方法で。これはふだんの仕事で解決済みなのでそれを採用しました。

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