コーヒーブレーク 102 「静脈」

 

 

割れし薄氷蝶となり飛びゆける

[われしうすらい  ちょうとなり とびゆける] 和菓子にも薄氷というものがあるそうな。ただしこちらは「うすらい」ではなく「うすごおり」と読む。富山は小矢部市にある某和菓子屋さんの超ロングセラーの銘菓だそうだが、個人的にはいまひとつ興味がわかず。ある雑誌に「和菓子特集」が組まれていたときも、冒頭のほうの茶道の席で使うような上品な和菓子は「ふ〜ん」としか思わなかったが、後半のふつうの萬頭や羊羹やどら焼きなどは見るからにおいしそうで、すぐにでも食べたくなってしまい困ったことがある。菓子にかぎらず食べ物はとくに、あまりよけいな手間をかけていないシンプルなもののほうが私はだんぜん好きだな。値段もてごろだし。

雪解野にふとき静脈ほそき静脈

[ゆきげのに ふときじょうみゃく ほそきじょうみゃく] 雪は降ることはあっても積もることはなくすぐに消えてしまうようになった。除雪用具のスノーダンプやスコップなども物置にしまいこんだ。自分の車にはまだスコップが一丁載ったままになっているが、これは登山などで山間地に行った際の非常時に備えての道具として積んでいるものである。今冬は山には、平地とちがって例年なみの雪があるという話もあるが、気温的には決して厳寒の冬ではなかったから、このあと溶けるのはけっこう早いだろうと思う。やはり山に長い間残雪として存在し、ゆっくりと溶けて地中に浸透してこその「豊かな水」なのだ。今年も夏場に水不足にならないといいが。

春泥や豆粒なほどの島四つ

[しゅんでいや まめつぶなほどの しまよっつ] 春泥そのものが生活圏にはほとんどなくなった。言うまでもなくいたるところがコンクリートやアスファルトで覆われてしまい、裸の地面というものが少なくなったからである。加えて側溝や河川も改修がすすみ、降った雨や雪解け水もさっさと流れて行ってしまう。/ずっと昔1キロ半くらい離れた中学校まで歩いて通ったが、メインルートは両脇に水田が広がるような未舗装の狭い農道だったので、春先やすこし強い雨が降ったあとは水たまりがあちこちにできた。それをよけつつ歩いていくのだが、たまに道幅いっぱいに水たまりが広がっていて、おまけに短靴だったのでどうにも通過できず、かといって今さらもどるにも遠すぎる。思案の末、裸足になりズボンを膝までまくってその水たまりの中を突破したこともあったな。しばらく歩いてきれいな水があるところで足を洗い、手ぬぐいで拭いてまた靴を履いて……。

 

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