クリスタルグラス

私は酒はあまり飲みません。暑いときにビール一二杯くらいでたくさんという程度。ウィスキーもワインも日本酒もおいしいとは思うのですが、量的にはまったくの下戸です。その私のところになぜか飲酒用のハイクラスの器があります。左はスウェーデンのコスタボダ(KOSTA BODA)のタンブラー、右はドイツのローゼンタール(Rosentahl)のブランデーグラスです。

もう30数年も前のことになりますが、東京で小さな広告代理店に勤務していた頃に、仕事がグラフィックデザインということもあってデザイン的なものに広く興味関心がありました。乏しい給料の中からかなり無理してデザイン関係の本や雑誌を購読したり、展示会に出かけたり、専門店で買い物をしたりしていました。写真のグラスはたしか銀座高島屋の洋食器売場で買い求めたと思います。当時で5000〜10000円くらいしたかもしれません。今だと10000~20000円くらいの感じでしょうか。

そんな高級なグラスを二十歳そこそこの、ジーパン&Tシャツの若造がじっと眺めているのですから、店員にはけげんな顔をされましたが、でもお客はお客です。それこそ清水の舞台から飛び降りるような気持ちで、それぞれ2個買いました。むろん別々の日にです。

左のクリスタルガラスでできたタンブラーは通称「象の足」と呼ばれていたような気がします。底に九つの丸みを帯びた突起があり、たしかに象の足のような印象ですね。大きさは径90mm、高さ87mmながら重さは448gもあり、ずっしりと重いです。その反面、飲み口の上辺は厚さ1mm余とごく薄くできています。「手作りグラス」によくあるようななにもかもが厚くぼってりとした鈍重な感じはまったくありません。ろくに酒が飲めないながらも、これでシングルモルトウィスキーのオンザロックを傾けると、じつにいい気分です。

右のはやはりクリスタルガラス製でスタジオラインというシリーズのもの。なによりもその極薄のスタイルにほれてしまいました。上縁の厚さは1mm、足の太さも6mmしかありません。大きさは径90mm、高さ110mmで重さは106gです。「象さん」の1/4。ぱりんとすぐに割れてしまいそうな危うさがすてきです。これに注ぐブランデーはやはり安物では似合わないぞ、というわけで、これも気違いじみた話ですがマーテルのコニャックを買ってきました。

品物のデザインは見た目だけでは分かりません。一見とてもよさそうに見えたのに実際使ってみると具合がわるいということは珍しくありません。自分のお金で買い求め自分で使い込んでこそほんとうの価値が分かる、評価ができるのだということを、このクリスタルガラスの器で痛感しました。

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