端金のマスキング

端金は「はしたがね」とも読みますが、ここでいうのは「はたがね」のほうです。四角または丸い棒状の竿の一端に半固定された端板(はしいた)が設けられ、竿の途中には可動の羽子板(はごいた)があり、このふたつの板で木材などを締め付けて接着したり加工の目安となる線をまとめて引いたりするための道具です。昔からあるオーソドックスなものですが、木工にはとくになくてはならない大事な道具です。

当工房ではこの端金を大小合わせて90本ほど使っていますが、板同士を接着させて幅広の板にするなどの際に接合部からはみ出た接着剤が端金に付着しないようにしないといけません。こびりついてしまうと後で羽子板がうまくスライドできなくなるばかりではなく、もっと深刻なのは接着剤が端金の金属や汚れなどと反応して材料にシミを作ってしまうことです。このシミは意外に頑固で、木材の表面だけでなくときに1mm以上も深く内部まで汚染してしまうことがあります。

これを防ぐには接着剤の付いた材料と、端金とが直接接触しないようにしなければなりませんが、当工房では通常、写真のように端金の竿のほうに養生テープを貼っています。締め付ける対象はそのつど寸法が違うので、前のものより長いぶんにはテープを貼り足せばいいのですが、前のものより短い場合はテープをはがさなければなりません。そういう貼ったりはがしたりの手間は若干ありますが、コマ(木の小片)などを間にかうのに比べると端金が安定して使えますし、シミつきを完全に防ぐことができます。

ただしこの方法に用いるテープはなんでもいいわけではありません。要するに、貼るのが簡単+必要な間はしっかりとくっついている+はがそうとすれば簡単にはがれる+どんな接着剤でも裏に浸透しない+値段が安い、といった条件を満たさないとだめです。当初はいわゆる通常の紙製のマスキングテープを使っていたのですが、端金のマスキングとしては作業性があまりよくない(手できれいにちぎれない、長時間貼ったままにしておくとはがすのが難しくなり糊残りする、など)。

それで試行錯誤の末に8年前くらいから採用しているのが建築の養生用テープです。リンレイテープの「養生用ポリエステルクロス650」の25mm幅。この種のテープはホームセンターでもどこでも売っていますが、粘着力が強すぎたり丈夫すぎて手で切りにくい、幅が38mmや50mmと広すぎるなど、端金用には向いていないと思っています。

この「養生用ポリエステルクロス650」ですが、近辺のホームセンターなどでは扱っていないので工業資材専門のインターネットのサイトから通販で入手しています。手持ちがなくなってきたので補充したいのですが、東日本大震災および福島第一原発の事故の影響もあって受発注が滞っているようです。地震・津波はそれ自体は天災ですからある意味で受容するしかないのですが、後者はあきらかに愚劣きわまる人災、それも戦争に匹敵するくらいの激甚人災といっていいでしょう。事態は日々・刻一刻悪化するばかりで、ほんとうに日本はどうなってしまうのか。暗澹たる思いで見つめています。

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