6月28日に始まった「鳥海山・飛島ジオパーク構想 ジオガイド養成講座」の第4回目。今回は8月8日と9日の2グループに分かれて山形県唯一の島、飛島に研修に行きました。私は9日でしたが、お盆前の日曜日とあって船も満席状態。
9時に酒田港を出航し、1時間15分で飛島に到着。船内は冷房が効きすぎて寒いくらいだったのでずっとデッキに出ていたのですが、海上から眺める鳥海山や出羽山地・月山・摩耶山地などが、いくぶんかすんでいるとはいえたいへん魅力的です。私は飛島を訪れるのは十数年ぶりでこれが2回目ですが、あいかわらずウミネコがたくさん船に寄ってきます。
午前中は勝浦会館にて座学です。NPO法人パートナーシップオフィス理事の金子博氏による「海洋ごみ 〜深刻化するプラスチック汚染」という題で、日本各地のおもに海岸のゴミ汚染の問題を多数の画像や動画も交えて解説しました。じつは飛島も海流の関係でとくにゴミが漂着しやすい場所のひとつだそうで、金子氏らによる十数年にわたる海岸清掃のようすも紹介されました。ジオパークということで地学的に特徴がきわだっており風光明媚でもある場所をせっかく訪れても、そこにゴミが散乱していたのでは興ざめしますからね。環境保全ということもジオパークの重要な課題です。
お昼はカフェスペース「しまかへ」特性のカレーでした。具のイカやジャガイモ(ゴドイモ?)もおいしかったです。
午後からはフィールドワークです。飛島は周囲12km、面積2.7km^2ほどの小さな島ですが、炎天下で非常に暑いことと、帰りの午後3時45分発の船に間に合わせないといけないので、今回は南端部のごく一部分だけの観察です(島をひととおり巡るだけでも丸一日以上かかります)。
まずは遠賀美神社(おかみじんじゃ)からスタート。ここは島一番の聖地である御積島(おしゃくじま)=本殿、それを遥拝する西海岸の明神社=遥拝殿、に対する里宮という位置づけです。セミがさかんに鳴いていましたが、ミンミンゼミの1割ほどがミカド型という突然変異の全身エメラルドグリーン色のセミだそうです。アルビノでしょうかね。
次いで島南端の館岩へ。ただし時間がないので上にはあがらず麓で地質・岩石等の説明を荒川敏夫氏より受ける(以下同じ。民俗・文化面については岸本誠司氏が担当)。館岩ならびに、柏木山はおもに流紋岩からなるが、細部をみると色合いや形状はさまざま。大きな断層面も見ることができます。オーバーハングする柏木山南面断崖にはハヤブサの営巣地があります。なお小松ヶ浜の砂浜の砂は海水浴場として利用しやすいように島外から運んだものだそうですが、今なら環境破壊・改変で許可されないでしょうね。島の西側に回り込むと1kmほど離れた海上に御積島(右)と烏帽子群島(左)が見えてきました。
賽ノ河原の黒っぽい丸石は輝安山岩円礫で、これは烏帽子群島の柱状節理の一部が崩れたものが、大波によって海底を転がってここにたどりついたものらしい。まるで人為的に丸石を敷き詰めたような一種異様な光景で、まさにあの世への入口のような雰囲気があります。
続くゴトロ浜の緑色火山弾と凝灰岩の互層、そして顕著な海食崖と海岸段丘もみごとです。かつての火山灰にめり込んだ火山弾の凹凸がはげしく、足元がごとろごとろしてたいそう歩きにくいことからゴトロ浜の名前がついたとか。
あまり暑いのでばて気味の人もおり、明神社の木陰で休憩を取りましたが、社のまわりは草が生い茂り、しめ縄も張られた形跡がなく、ちょっと荒れた感じになっています。これは島民の高齢化と減少がすすみ手入れする人手が不足しているからとのこと。かつては1600人ほどもいた島民も今は250人くらいまで減り、高齢化率も群を抜いています。
帰路はタブノキとマツが生い茂る段丘を天辺まで上がり、東側海岸への下りでは用水ダムのそばも通りましたが、ダムともいいがたい小規模のもので、小面積でかつ高い山のない離島の水の苦労がしのばれました。
圧巻はなんといってもその後の約1時間にわたる、3艘の漁船(遊覧船)に分乗しての島めぐりです。勝浦の港を出て烏帽子群島と御積島(おしゃくじま)をぐるりと周回しました。波もおだやかで、空にはちょうどいい案配の雲も出ており、陸上ほど暑くもなくほんとうに快適でした。
御積島は本島より高く標高75mありますが、火山活動の隆起によって形作られた島です。岩質は流紋岩。北側にある海食洞窟は壁が鱗片状の岩になっており、龍神が棲む聖地として古来より島民や船乗りたちの信仰を集めてきました(最後の写真から2、3枚目)。またウミネコの一大繁殖地として国の天然記念物の指定を受けています。
個々の島の名前は私には判別できませんが、上の写真は館岩、2枚目は柏木山、3枚目は御積島(右)と烏帽子群島(左)、4〜9枚目は烏帽子群島の島々です。烏帽子群島は遠くからはただ尖った小さな島くらいにしか見えませんが、すぐ近くで見ると輝石安山岩の溶岩の柱状節理が非常によく発達しており、それが部分的にではなく島全体が角材を積み上げたような感じなので、たいへん驚きました。その美しさにいたく感激しました。