雪椿あおむけにまたうつぶせに
前にも書いたが、ツバキ(ヤブツバキ、ヤマツブキ)は基本的に暖地性の常緑樹で、園芸品種の母種である。それに対しユキツバキはその名前のように、より寒冷地に適応するようになった椿で、主に秋田県から滋賀県北部の日本海側、標高300〜1000mの山間地に自生する。雪の重さに耐えるように丈は低くまた柔軟で、雪の下に埋もれるようにして冬の寒さをやりすごす。/外観はヤブツバキに似ているものの、花は水平に近く開き、雌しべは基部でわずかに合着する(ヤブツバキは下半分が合着)。葉質も花びらもヤブツバキに比べ薄いとはいうが、これは実際に両者を見比べないとわからないし、さらにヤブツバキともユキツバキともいえない中間種もあり、それはユキバタツバキというので、素人にはますます混乱しそうではある。/ツバキ類は花が散るさいに花ごとぽとりと落ちるのが特徴のひとつであるが、たとえばエゴノキの落花のようにおおかたが上向きに着地するというわけではなく、上向きだったり下向き、横向きだったりさまざま。重心や空気抵抗の違いによるものだろうか。/ユキツバキで鮮明な記憶があるのは出羽山地の胎蔵山で、まだ残雪がある山稜で大群落のユキツバキが深紅の花をたくさん開いているようすはこの世のものではないようである。
おちこちの遺骸よせ来ぬ雪解川
気温の上昇よりも雨が降ることによってたちまち河川が増水する。降水量がとくにさかんな場合は濁り水ともなるが、そうでなければ青白い雪解水である。いずれにしろ水量が多いので、さまざまなものが流されてくるが、動物質のものであれ植物質のものであれ要するに死体である。それらはいずれ他の動物やバクテリアなどによって食われ分解され消えてしまう。そうして循環していくわけだ。月光川本流で川底や川岸に散在していたサケの遺骸も、川の増水で一掃されるだろう。
すかいつりーきっさきにつちふれり
東京スカイツリーは2012年5月に電波塔ならびに観光施設として開業した、高さ634mの鉄骨・鉄筋コンクリート造の日本一の高さの高塔である。ただし所有・運営主体は東武鉄道系列の東武タワースカイツリー株式会社という民間によるものであって、これほど巨大な電波塔でありながら公共施設ではない。個人的にはこのタワーにはとりたてて興味もないが、あの石原慎太郎がこのタワーの計画に対して「インターネットの時代にそんな巨大な塔が必要なのか」と疑義を呈し、またあの曽野綾子が「高さを競うのは後進国のあらわれ」などと珍しくまともな批判をしている。実際、電波障害や落雪の危険、景観の毀損などが問題視されているようだ。/つちふるは漢字では霾と表し「ばい」とも読む。また「霾(よな)ぐもり」とも称するが、黄砂のことで、中国大陸の乾燥地帯で強風に巻き上げられた砂塵が、偏西風に乗って日本にまで飛来する現象のことである。そういえば鳥海山の山岳観光道路が開通した4月終わり頃に、最高点の鉾立あたりまで行ったら大量の残雪の表面がやけに黄色く見えていたことがあった。春スキーの滑降跡が逆に白くジグザグを描いている。むろん黄色っぽいのは黄砂である。