通称ハードメープルと呼ばれる板を2枚入手しました。北米産の無垢材で、サイズは厚みはともに30mm、長さは3.1mですが、幅は右が27cm、左はなんと33cmもあります。他の材料でも同様ですが、板幅が1尺=約30cmをこえると視覚的にはたいへん大きいという感じがしてきます。上の写真でも左の板は右の板に対し幅の差が6cm、22%しか違わないとはとうてい思えないほど大きく感じます。
2枚とも両面無節の白身、しかもほぼ全面に縮み杢が出ているという、これ以上はないというくらいの最高級の材料です。写真ではその杢の具合がわかりやすいように板面をすこし水で湿らせて撮影しています。
ハードメープルは樹種的にはサトウカエデ=シュガーメープルを主とし、それの近似種を含む硬質のカエデ類の総称です。辺材は灰白色、心材は灰黄褐色。肌合は硬質緻密で、気乾比重は0.70ほどあるのでかなり重いほうの木といえます。強度も非常にあり、家具材や什器類・建築・床材・楽器等に広く用いられています。日本の木でいうとイタヤカエデがそれにもっとも近いでしょうか。ただ固く逆目が立ちやすいので、加工はけっして楽とはいえません。
ハードがあるならソフトもあるのだろうと推測できますが、実際にレッドメープルやシルバーメープル・ビッグリーフメープル・ボックスエルダーなどの通称であるソフトメープルという材も一般的です。こちらはハードメープルにくらべると色もやや濃くて淡黄褐色から淡赤褐色、比重も0.54と中庸で、扱いと加工はしやすいです。硬さはハードメープルにくらべ3/4程度とされ、それが通称のソフトメープルの由来となっています。
当工房ではこれまでこうした北米産のカエデ類はほとんど使ったことはありません。しかし、比較的安定して入手でき(計画的な生産が長年されている)、ウォールナットやチェリーなどからみればわりあい安価で、ユーザーからの知名度や評価も高い木ですので今後積極的に使おうと考えています。もっとも上記の2枚の板のような、あまりにもスペシャルな材は逆に使いにくい面があります。値段的にだけでなく物自体がまれにしかないからです。