研ぎ減った包丁

 

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上が自宅で使っている包丁、下が工房の台所で使っている包丁です。もともとはまったく同じ形と大きさの包丁だったのですが、やはり家庭と工房とでは使用頻度がずいぶん異なるので、何度も研ぎをくりかえしているうちに刃が減ってしまい、これだけ差が出てきました。自宅用にはもう一本同じものを使っているのですが、減り具合もほぼ同じくらい。ただし刃の減りは摩耗よりも刃こぼれの修正によるものが圧倒的なので、刃がこぼれてしまうような無理な使い方をしないように注意が必要です。

酒田市は池田太四郎商店製の包丁ですが、牛刃と菜切とを兼ねたような形で「文化包丁」と呼ばれています。峰の厚さが先端で2mm、元で3.3mmほどあり、出刃包丁ほどではないにしてもかなり頑丈です。刃渡りは175mm(約8寸)、全長315mmです。刃の材質は安来(やすき)鋼白紙2号というもので、青紙鋼に比べるとやや柔らかく研ぎやすいといえます。この鋼はノミやカンナや小刀などにもよく使われている定評のあるものです(刃の硬さや長切れを重視する場合は青紙鋼のほうがいいのですが、硬いぶん研磨はすこし手間がかかります)。

ステンレスの包丁は錆びにくいので、いまはとくに家庭ではほとんどそればかりになっているようですが、錆が出にくく見た目にはきれいなままなので、刃が摩耗して切れ味が鈍くなってもそのまま長期間使い続けている家庭が多いですね。ご自分で刃を研げない以上それはいたしかたなく、またもし研ぐだけの道具と技術があったとしても、鉄鋼にくらべると硬めで粘性があるのでだいぶ研ぎにくいのも事実です。したがってプロの料理人などは、切れ味重視=しょっちゅう研ぐ必要があるため、たいていステンレスではなく鉄鋼の包丁を使用しているようです。うまく研ぐことができればリンゴやキュウリや葉物野菜などはまるで包丁自体の重さですっと切れるような感覚(もちろん錯覚ですが)で使うことができます。

 

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