いま庄内平野は稲刈りがはじまっています。見渡すかぎり黄金色に輝く稔り田で、とりわけ天気がよく陽光が強い日中などは平野全体がまるで金箔を張ったようにまぶしいまでに光り輝いています。 単純にきれいだなあと感じないではありませんが、これはきわめて人工的な光景で、凹凸のほとんどない平坦な地面といい、そこにほぼ単一の植物が生えていることといい、「自然な」景観にはほど遠いものです。そのためだと思いますが、私はきれいだなと感ずる気持ちと違和感とのせめぎあいをいつも覚えます。
現在では前ほどにははやらないようですが、例えば北海道の前田真三氏の「風景写真」などは、全部がそうだというわけではありませんが、一面に植えられた穀物や花の写真を「ネイチャーフォト」と称するのは、明らかに違うだろうと思います。大型の重機や農業機械、大量の農薬や化学肥料などが投入されることではじめて出現可能な人為的・人工的な風景ですね。ある意味では都会以上に都会的な作られた風景といえます。すくなくとも私はそういった写真をみて「自然」を感ずることはまったくありません。
あ、いちおうお断りしておきますが、私はそういった田園風景や農耕地やそれらの写真といったものを否定しているわけではありません。ただ本来の自然とは違うことや、その違いというものにもっと繊細・敏感でありたいと考えているということです。