夕焼けや万年後には蛞蝓之國
通称「俳句甲子園」と呼ばれている全国高校生俳句選手権の昨年の最優秀句は広島県立広島高校・青本柚紀さんの<夕焼けや千年後には鳥の国>である。いい句だとは思うが、「最優秀賞」というのはどうなんだろうね?という気がする。文学の世界では高校生ともなれば大人扱いにしてしかるべきだろうから、もっとすごい句はなかったのかとつい考えてしまう。/さて人類は千年後にははたして存在しているだろうかというとまあ微妙なところか。近代以降のわずか200年程度でどれだけ世界が(地球が)変貌したかを思うと、千年先というのは予想もつかない感じではある。ただ上の青本さんの<千年後は〜>の句では鳥類が繁栄しているように詠まれているが、それはないだろう。農薬や放射能の汚染でももっとも影響を受けやすい生物のひとつはまちがいなく鳥類のように思われるので、人類にとってかわる生き物はもっとべつなものではなかろうか。まして一万年後ならね。/上記の私の句は言うまでも青本さんにささげるオマージュです。ついでに言うと俳句にかぎらず「高校生らしい作品」「高校生らしくない作品」云々という批評は私は大嫌いだ。それは高校生をばかにしているだけです。
イナイ人ハ手ヲアゲテ八月十五日
小学生から高校生くらいまでを対象に、私は野山へガイド役としてくり出すことがときどきある。私自身は言わないが、子どもたちの班長や気をゆるした引率の教諭などが「はい、いない人は手をあげてください」などといって点呼をとることがある。むろんそれ自体はたんなる冗談であり、全員がそろっていることが点呼をとるまでもなくわかっているからこその言葉なので、べつに目くじらを立てるようなことではない。/しかし彼らといくらも年のちがわない若い人が先の大戦ではおおぜい兵隊として召集されて、その多くが死んだ。あるいは爆弾や栄養失調や疎開先での抑圧等により小さな子どもたちがたくさん死んだのだ。
るりたてはきべりたてはと翔びきたる
ルリタテハ、キベリタテハともわりあい珍しい蝶で、しかも非常に美しい蝶である。それぞれ漢字では瑠璃立羽・黄縁立羽と書くが、前者の翅は濃紺の地に外縁近くに空色の太目の帯が前後に入り、後者は小豆色の地に外縁の黄色の太い帯とそのすぐ内側の青い斑紋。他に似た色彩模様の蝶はなく、かなり離れた位置で遭遇してもそれとすぐわかる。/日本産の蝶は220種余りしかなく、さらに東北地方くらいに地域を限定すれば実際に遭遇可能な種はずっと少なくなる。またそれぞれに翅に特徴的な色合いや模様を持っているので、顕花植物と同様に種の区別がしやすい。したがってその気があれば、小学生くらいでも蝶を見分けるのはそう難しいことではない。
※ 写真はヤマボウシの果実。初夏に白い大きな花を咲かせるミズキ科の樹木で、実は赤く熟すと甘みがあっておいしい。