明治参拾六年

 

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ある方から、古い家屋を解体した際の木材等がいらないかというお声がかかり、先日伺ってきました。材木のほうはケヤキを中心とした造作材ですが、ほかに欄間やふすま、組立式の飾り棚、機織機がありました。 バンの荷室いっぱいに積み込んで工房に持ち帰り、あらためて清掃点検整理をしたところ、かなり痛んでいるものもあり再利用できるものは限られようですが、おひな様か祭事のときの一時的な組立式飾り棚とおぼしきものがあり、そのひとつに写真のような墨書がありました(氏名はわざとぼかしています)。なんと明治36年3月です。西暦でいうと1904年ですから今から110年前。

古いほうの家屋自体はすでになく、土蔵の中にいろいろ入れてあったのですが、1世紀以上も前の木製の什器がそのまま残っていたことに驚きとちょっとした興奮を覚えました。素材はスギで一部はおそらくヒノキのようですが、無垢の木だからこそ今まで残っていたわけで、これが鉄板や樹脂などであればとうに朽ちてしまっていたと思います。

またこうした古い木製品をみるにつけ思うのは、当時は樹木の伐採から製材・加工・仕上までほとんどすべて手作業によるもので、現在に比べ相対的にたいへん高価で貴重なものだったにちがいありません。細密な調度品などは一般庶民には無縁なものだったと思います。だからこそ、いつ誰がどこであつらえたかといった覚え書きを品物にもいちいち墨書したのでしょう。墨は基本は炭素ですから劣化して消えてしまうこともまずありませんし。

この組立式棚板がすんなりとまた使えるようなものかどうかは細部を点検し実際に組み立ててみないとなんとも言えませんが、無事できるようであればまた報告したいと思います。

 

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