コーヒーブレーク 18「ほどきかた」
行く春を動物とも植物ともいえぬもの
歳時記をみるとたいてい、春は「立春(2月4日頃)から立夏の前日までをいう。陽暦ではほぼ二、三、四月にあたる」云々と説明してあるのだが、2月はじめで春だなんて、ばか言っちゃいけませんよ。厳寒期じゃないか。夏は夏で、「立夏(5月6日頃)から立秋(8月8日頃)の前日までをいう〜」とあるのだが、もっと温暖な地方ならいざしらず、ここ山形県庄内地方ではどう考えても5月いっぱいくらいは春だし、8月8日前後は炎暑の真っ最中。たしかに5月でも日中の気温が25℃を超えて汗ばむ日もあるにはあるが、逆にストーブを出したいほど寒い日もあるので、平均的にみればまだ春。/歳時記や暦に立春や立夏と書いてるあるからとか、季節の移ろいに俳人は敏感なのだとうそぶいてみたところで、それは観念に束縛されて頭でっかちなだけ。むろん春夏秋冬の厳密な定義などはなくて、自分が春だと思えばそれが春なのだが、多くの人の共感を得られるかどうかはまた別だろう。私としては当地の四季を月単位であえて粗く区切るとすれば、春=3〜5月、夏=6〜8月、秋=9〜11月、冬=12〜2月がいちばん納得できる。
青大将ほどき方をいま考えておる
アオダイショウは日本本土では最大の 蛇で、長いものだと2mに達する。胴の太さも5cmくらいまでなるというから、大人の手でやっと指がまわるくらいの太さだ。立派である。分類としてはナミヘビ科ナメラ属の蛇で、「並の蛇で滑らかな身体」という意味なのかどうか。色合いは名前のとおりに青みの強い個体も少なくないが、ほかに暗い黄褐色から緑色の強いもの、白っぽいものまでかなりの幅がある。幼蛇は一見マムシに似た斑紋を有しているので、マムシと間違われることも多いそうである。アオダイショウは無毒で、人間に危害をおよぼすことはまずないのでちゃんと識別できるようにしたい。/ああ、そういえば2年前だったかに動物園の「ペット」のアオダイショウを触り手に持ったことがあったな。生まれてはじめての体験だったが、飼育係の誘導があり人によく慣れている蛇らしく、私も怖いとか気持ちわるいとかはいっさい感じなかった。変温動物なのでわりあい冷ややかで、乾いたつるんとした感触。
蟻ふんでひきかえす蟻のありにけり
アリは群れ全体で一匹の動物のようでもあるな。種類にもよるが、女王蟻から乳母蟻、ツバメ蟻、働き蟻、監督蟻、兵士蟻など画然とした役割があり、それに徹することで全体がうまく機能し生存できるしくみだ。ただし最近では研究がすすむにつれ、その役割も絶対的なものではないし、群れにはある一定程度の比率でなにもしないぐうたらな怠け蟻もいて、その蟻を人間が取り除くと、残った蟻の中でまた同じくらいの比率で無役の蟻が現れるそうである。「アリとキリギリス」という寓話があるように、アリはいつも一心不乱に忙しく走り回っているイメージがあるが、実際にはそんな単純な「社会」ではないのだろう。全力疾走ではなくほどほどにして余力を常に残しておくということかもしれない。