※※ タイトルの入力が先日来うまくいかないので(ブログソフトのバグ?)、とうぶんの間「タイトルなし」とし、本文冒頭に見出しをすこし大きく付けることで代用とします。

コーヒーブレーク13 「峡谷」

 

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 峡谷に空気の柱ひしめけり

空気自体には色もなければ匂いもしない。透明で、ふだんはその存在をまず意識することはない。しかし風がすこしあればその重さを感じることができるし、霧がかかれば間接的にではあるがそこに空気が満ちていることがわかる。峡谷という言葉は文字通りに山あいの細く深く狭まった谷のことだが、ところによっては両側の岸壁がほぼ垂直に近いほど切り立っていることがある。そのような場所では、いわば空気の柱が列をなしているわけだ。/そういえば鳥海山の白沢川(シラソ)にもヤミチというみごとなゴルジュ(廊下のような形状で両岸が切り立った渓谷)があるのだが、ずっと昔にこの沢を出合から源流近くまで遡行したことがあり、まず初日の最初のほうであらわれたこのヤミチを突破するのに非常な苦労をしたことを思い出した。ダイレクトに突破しようとするならばゴルジュを泳いでいくしかないのだが、先がどうなっているかわからないし流速もあってリスクが大きすぎる。そこでヤミチの手前から左岸を高巻きしたのだが、急斜面を登ってまたシラソの流れに降り立つのに2時間以上かかった。あのヤミチをせめてまた眺めるだけでも眺めてみたい気がするが、そこまでたどりつくだけでももうたいへんだろうなあ。

水音を聞きて千年立ちつくす

人為的に植栽したスギ(杉)は別として、天然のスギの場合湿り気の多い谷筋に生えていることが多い。ことに大きな滝の近くや、日陰で風下となり雪が遅くまで残るような北面・東面の山腹に大きなスギがそびえたっていることがある。滝が間近かにきれいに眺められるような場所では、もともとそこに立っていたスギの大木を、景観上の都合から滝とワンセットのものとして意図的に、たとえば「神木」として保護することも珍しくない。/一般に針葉樹は広葉樹にくらべると樹の寿命が長く、世界最長のものでは1万年をゆうに越えるものもあるという。スギでも屋久島の屋久杉は別格としても、あちこちに500〜1000年クラスのスギは点在している。その直径1mを軽く超える巨木に接すると、なるほどたしかに私のような無神論者でもその威風にこころうたれるものがある。

凡庸な山も削りぬ雪解川

雪解けのピークもそろそろ過ぎたのか、河川の白濁した増水もいくらか収まってきた。雪解けは気温の上昇よりも降雨がてきめんで、春先のまだ冷たいとはいえ雪よりはずっと温度の高い雨が強く降ると、みるみる残雪が嵩を減じていく。川は降水量にくわえてその雨で溶け出した雪の水で一気に増水する。/前田普羅に「雪解川名山けづる響かな」という句があり、じつにみごとな名句だと思う。しかし当然ながら水勢によって削られるのは名山にかぎらずすべての山であり大地である。名もなき山々といういいかたは私は大嫌いだし事実にも反するが、著名かつ標高も高い山ではない、その意味では平凡な山にもぜひ光をあてていただきたいものだ。

 

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