中島台獅子ヶ鼻湿原 2

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5月12日に行った、鳥海山北面の中島台&獅子ヶ鼻湿原の続きです。遊歩道が沢沿いから離れていくに連れてミズナラは減って、しだいにブナが優先するようになります。もちろん100%ではありませんがほぼブナの純林です。雪もところどころまだ残っており、それを見越して長靴で正解でした。ただ雪で濡れた木道は滑ります。私も一度派手に尻餅をついてしまいました。木道の上に斜めに倒れかけた樹をよけようとしてバランスを崩してしまった拍子にです。林床には雪がまだけっこう残っていて、その雪と厚く堆積した落ち葉と、白く滑らかな樹の肌、急速に展開する若葉の薄緑。これらのコントラストがたいへん美しいです。

しかし写真をよくみるとブナの幹の根元のほうがみな同じくらいの高さ=約1.5〜2mでみな黒っぽく凸凹になって株立ちになっています。じつはこれは炭焼きの形跡です。

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この森で最大級のブナで「あがりこ大王」と名付けられている巨木です。樹齢300年以上、樹高25m、幹周7.62mで、奇形ブナとしては日本一の太さと目されています。ご覧のように甚だしく湾曲・凹凸していますが、前の写真同様に炭焼きの材料として一度伐採したあとからの萌芽によってこのような変わった形の樹形となったようです。かつては炭焼きは農閑期の冬の仕事で、雪が積もった時期に林中に小屋掛けして寝泊まりしながらブナその他の樹木を伐り出しました。そのため、その土地の平均的積雪高、すなわち1.5〜2mくらいの高さで根上がりとなりました。奇形ブナといっても純自然の産物ではなく、炭焼きという人為的介入があってできたものです。

この「あがりこ大王」は現在は保護のために周囲にロープと柵・木道が設置されていますが、昔は訪れる人も少なかったので(知る人ぞ知る、という程度)、私も子供たちもかつてはこの樹で木登りを楽しんだのですが、今はとうていかないません。

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さてその炭焼きの窯です。中島台レクリエーションの森では炭焼き窯の跡が26個発見されているそうです。「あがりこ大王」にほど近いところにある写真の窯は、使わなくなってから数十年以上経過していると思いますが、天井の崩落もなくほぼ完全な形で残っている奇跡的に珍しい窯です。高さは2m弱でしょうか。

壁面は石積みでというのはすぐ分かるのですが、ではドーム状の天井はどうやって作るのでしょうか? じつは私も答えを知ったのは5、6年くらい前のことで、要するにこの窯そのものが「焼き物」なのですね。いちばん初めに炭を焼くときに、壁面内部にぎっしり立てて詰めた木(炭の原料)の上部に粘度をかぶせドーム状にしてから炭の材料と同時に焼き上げるということです。それがうまくいけばみごと素焼きの天井になるというわけで、なるほどこれなら雨雪が当たっても簡単に崩れたりはしません。実際に現役で炭を焼いていた方からじかにお聞きした話ですから間違いないでしょう。

 

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