湧水や井戸水がとうとうと流れているような、やや日陰の湿った場所にはいまユキノシタの花が満開です。ユキノシタはユキノシタ科ユキノシタ属で、この仲間ではふつうにみられる代表的な植物ということでしょう(Saxifraga stolonifera)。
写真はいづれも鳥海山麓の平地の湧泉直近の流れのそばに咲いているユキノシタですが、清冽な流れに白い花弁が群開している光景はたいそう美しいと思います。生えているようすからすると人為的に植えたものものではなく、もともと自生していたものをその葉や花のよさを愛でて大事に保護してきたものでしょうね。近縁種には山間の渓流のそばに生えるダイモンジソウがありますが、ユキノシタにくらべると花も小さく数も少なくこれほどは群生しないので、印象はずいぶん異なります。ユキノシタは花茎20〜50cm、花弁の上3枚は長さ3〜4mm、下2枚は15〜20mmほどもあります。根元から匍匐枝を出して繁殖。
ユキノシタとはかわった名前ですが、漢字では「雪の下」または「雪の舌」と表記します。前者は、腎円形の葉に葉脈に沿って雪をかぶったように白っぽいところがある、または常緑の多年草なので雪が降ってもその下に緑の葉があるところから。後者は、5弁ある花びらの下方2枚がとくに白く大きく目立つことから「雪の舌」だという説です。さらに虎耳草とも書き、腫れ物の消炎等の民間薬として用いられたそうです。