真冬の高瀬峡 1

1月21日(土)に鳥海山南西側にある高瀬峡に行ってきました。高瀬川は月光川の最大の支流で、平野部の高瀬地区で月光川本流と分かれたあと、鳥海山の南西面でいくつかの沢に分岐します。深く険しい谷筋が多く、標高250〜550mくらいまでの渓谷一帯が高瀬峡と呼ばれています。

白井新田地区の藤井集落から山ノ神までは2.2kmの林道があり、その先は高瀬峡遊歩道が整備されて春から秋まで手軽なハイキングコースとしてにぎわいます。最奥の大滝まで往復し弁当を広げても3時間ほど。ヒノソや二ツ沢・バンバ沢・カラ沢を横断しあるいは沢に沿って歩き、蔭ノ滝や由蔵滝・剣龍ノ滝・白糸ノ滝・大滝といった数々の滝を眺めながらの快適な山行を楽しむことができます。飲料可能な湧泉も数カ所ありますし、季節ごとにたくさんの花が楽しめます。

しかし冬期間は林道も積雪で閉ざされ、ヒノソとバンバ沢にかかる吊橋の橋桁が取り外されることもあって、訪れる人は極端に減ってしまいます。私自身も積雪期に高瀬峡に向かったのはこれまで10数回程度にすぎません。またその大半は湧水・湧泉の調査のためです。冬にこのあたり一帯に入るには、始めから最後まで「雪中行軍」になるのでカンジキをはじめとする冬山装備を欠かせませんし、無雪期の倍ほどの体力と時間を要します。地図とコンパス・非常食なども必携です。

このようにハイキングコースとして知られている高瀬峡もいったん冬となれば容易には近づくことができませんが、他の季節とはまた違った魅力がたくさんあり、しかもほとんど無人の自然を心ゆくまで味わうことができます。今回1月21日の山行でも下山時に林道で鉄砲打ち(猟師)に一人会ったきりで、山中では誰とも会いませんでしたし、足跡すら見かけませんでした。

写真が多くなるので、以後何回かに分けてレポートしますが、まずは山ノ神ノ沢(藤井の用水)です。藤井地区の水田の用水で、200年前の酒井藩の白井新田開拓時に掘削された人工水路です。人工とはいえ素堀の水路なので、一見非常にきれいな渓流にしか見えません。水源は山ノ神の先の標高350m付近にあり、本来はヒノソにほどなく合流していたものを強引に流路を変えました。降雨の直後をのぞけば流水のほぼ100%が湧水で、胴腹ノ滝と同じく混じりけのすくないとても柔らかい水です。もちろん飲むことができます。

3枚目の写真は右側が山ノ神ノ沢、左はヒノソからの導水で藤井公園の温水溜池に至るものです。こちらもほぼ素堀の用水路ですが、二つの用水がここで最も接近しています。6枚目は山ノ神直近の切通しです。ここよりすぐ上までは元々自然の渓流だったのですが、尾根を3m以上掘り下げて切って流れを無理矢理変えました。切通しはほかに何カ所もあるのですが、ここが最大かつもっとも分かりやすい例です。今なら重機や発破を使ってどうってことのない工事かもしれませんが、当時(およそ200年前)はすべて人手で行ったわけですからたいへんだったと思います。

 

 

 

 

 

 

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