山形県庄内地方はいま稲刈も終盤というところですが、ところどころで写真のような光景を見ることができます。刈り取った稲の自然乾燥で、田んぼに突き立てた1本の丸太(稲杭)に稲穂を積み上げています。高さは1.5mくらいでしょうか。蓑をかぶった人の群れみたいにも見えます。
私はやったことはありませんが、ただの棒1本ですから、ずり落ちたりしないようにかつうまく乾燥するように手早く積んでいくのはかなり難しそうです。この地方では稲の自然乾燥というとこの方法しか私は見たことがありませんが、他の地方ではやぐらを組んで横に渡した棒にハの字にぶら下げたり、いろいろなやり方があるようです。
昔はすべての稲がこの杭がけによる自然乾燥でしたが、いまは大部分カントリーエレベーターという大型の施設にもみを運んで、そこで乾燥・調整・貯蔵を行うようになっています。田んぼのど真ん中に高さが何十mもあるような巨大な建物があるので、最初はびっくりします。
農家が自分で稲杭に稲穂をかけて乾燥させるのに比べ、カントリーエレベーターの導入によって農家の手間と労力は格段に低減されたわけですが、それにもかかわらず稲杭にかけての自然乾燥が完全になくならないのは、やはり食味がすぐれているからとのことです。ただし手間がかかるので大面積は無理で、農家の自家消費分とか特別契約米などに限られています。
庄内地方は国内有数の米どころで、ここで作られている米は「庄内米」として市場で高い評価を得ています。しかし、さらにほんとうにおいしい米を食べたいと思ったら、やはり栽培の仕方だけでなく水と乾燥方法にも注目するべきでしょう。水がきれいな湧水で、刈り取った稲が自然乾燥されたものなら、それは最高の米ですね。
なんとか米といっても農協などで扱う場合は味にばらつきができるだけ出ないようにブレンドするので、結局品質(味、その他)はその地域の平均的なものになってしまいます。しかし実際のところ同地域であっても田んぼにより個々の農家により微妙に品質に差はあります。ですからほんとうにおいしい米、自分の好みにぴったり合った米を求めるなら、個別に農家と交渉することになります。
米は高い米でも10kgで5000〜7000円くらいなので、1食(150g=お椀2杯分)だと75〜105円。あんパン1個より安いですね。