大縮尺の地図でみると一目瞭然ですが、山形県と秋田県の県境あたりの海岸線が海に大きく張り出していますが、これは鳥海山からの溶岩流などが海まで押し寄せて海を埋めたためです。また山体そのものも沖合の海底まで地中深く伸びています。写真は山形県遊佐町の吹浦地区で釜磯という場所のものですが、数百mにわたる海岸線一帯から湧水が出て、海に流れています。
釜磯は文字通りにかつては巨大な釜のような地形の磯浜だったのですが、北側に広大な埋め立て地ができたために潮の流れが変わって砂が堆積するようになってしまいました。そのためその砂の層を突き破るようにしてあちこちから湧水が噴出しています。その量は膨大なもので、何本もの小川を形成して海に注いでいます。
地元の人間にとっては昔から見慣れた光景で、さほど特別なものとは思っていなかったのですが、外部から訪れた水門学・地学の専門家などはこのようすに驚嘆します。湧水は地上だけではありません。京都市にある総合地球環境学研究所の教授谷口真人さんが実測調査したところ、釜磯や女鹿湾・三崎公園北側の長磯などの鳥海山海底湧水は世界一の海底地下水湧出量であることが実証されています。世界中の海底湧水を調査研究してこられた方が専用機器(湧出量計)を海底に設置しての結果ですから、まちがいはありません。単なる地元びいきやお国自慢をこえて、鳥海山はさまざまな面でほんとうに特別な存在といえます。
今日は昼から子どもも連れてこの釜磯でたっぷり遊んできました。湧出口に脚を突っ込んだり、大岩の上にあがっておやつを食べたりしました。海水にくらべ異常に冷たい、澄んだ湧水は、ただ眺めているだけでも心が洗われるようです。今日はおおむね晴天で祝日でもあったのですが、他にはほとんど人がいなかったのは幸いというべきか残念というべきか。灯台元暗しです。