2008年9月に、当工房の旧ホームページの「全然自然」167頁に記した「ブナの葉枯」は、ウエツキブナハムシ(Chujoa uetsukii)というハムシ科の甲虫によるブナの食害についてでした。体長6mm程度の黄褐色の昆虫ですが、ときおり大発生してブナの葉を広範囲に食い尽くすために、遠くから見ると山林全体が時期外れにはやばやと紅葉したように見えます。ちなみにウエツキというのは人名で、葉の上につく虫という意味ではありません。
成長した葉の表面だけを食べることと、急速に大量発生することで鳥やカビなどの天敵も増え数年で収束するといわれています。鳥海山では大量の発生を2008年に確認しましたが、その後2009年も2010年も同様に食害が続き、このままではいくら葉だけとはいえ長期間食害にあったら樹木本体も弱ってしまうのでないか、枯れてしまうのではないかたいへん心配していました。
しかし今年はだいじょうぶなようです。8月のお盆休みにたまたま鳥海山中で出会った知人も「幼虫に白いカビみたいなのがいっぱい付いていた」と話されていたこともそれを裏付けています。調べてみるとこれはボーベリア・バシアーナという糸状菌。自然林はそれが健全な自然林であるかぎりどこかでバランスをとるわけですね。
その季節でもないのに標高500〜1000mあたりのブナ林帯が赤く染まっている鳥海山をずっと心苦しく眺めていました。断定まではできませんが、おそらくはもう安心していいでしょう。よかった、よかった。
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