ある家具の製作途中です。素材の木から若干の余裕をもって切りだし、鉋盤などで仕上がり寸法よりやや大きめに削ります。それを積み重ねたりしないでできるだけ個々ばらばらに、風通しがよく直射日光が当たらないところに1週間ほど放置(養生)します。そのあと再度(もしくは再三)手押鉋盤と自動鉋盤にかけて各パーツの厚みと幅を最終的に決めます。これを「分決め(ぶぎめ)」と呼んでいます。
分は寸尺の分(約3mm)のことですね。写真はその分決めがすんだ材料ですが、青色のクーピー(極太の色鉛筆の芯のような筆記具)で記してある数字が厚みと幅のそれぞれミリ寸法で、矢印は鉋盤を通した際の切削方向です。
このあと図面をにらみながら長さを決めますが、最初の木取りからこの分決めあたりまでが、実は製作における最大の山場です。自然素材なので不均一な材料ですし、無欠点の材料ということはまずありませんので、強度や見栄えや材料コストを考慮しながら、適材適所に配分するのは容易なことではありません。とくに大きめの家具の場合は、どの材料をどこに持っていくかで悩みに悩んで、毎回頭の中が白くなるような思いがします。
木取りがうまくいったと思っても、色味や小さな傷や干割れや変色などは実際削ってみないと分かりません。素材の反りや曲りが少なくない場合は、ほんとうに所定の寸法に上がるのかどうかも、実際削ってみないことには確信できません。したがって、木取>一時下拵え>養生>二次・三次下拵え>分決めまで無事にすすんではじめて一安心できます。
分がきっちり決まれば、あとはいつも通りの加工を順々とすすめるだけなので、むしろ気持ち的には楽です。最終的な品物の出来不出来も分決めまでの上がり具合で半分、この後の加工で残り半分が決まります。