20年以上も前になると思いますが、仙台のデパートで小物だけの個展を行ったことがあります。画廊ではなく、インテリア小物の売り場の一画で、700×1600mmくらいのテーブルを2台持ち込んで、その上に当工房の定番的な木製小物を中心に並べて展示即売しました。めったに仙台に行くことはないので、展示の合間に近くの商店街をぶらついているときに目にして買ったのが、写真の手箒(てぼうき)です。
座敷箒などと同様に材質は箒草です。それを木綿の色糸でたばね、持ちやすいように元のほうを45度くらい曲げてあります。全長は33cmですが、上質の細かい箒草を使用しているのでいたって丈夫です。毛先は若干ちびていますし、手元の色糸は弱ってきたので凧糸をきつく巻いて糊で固めていますが、まだまだ使えそうです。箒一つが何十年も保ったのでは売る方はたいへんでしょうが、しかしそれが物の本来の姿ですね。
工房ではむろんAC100V電源の集塵機と充電式の小型掃除機も使っていますが、手箒にはまた違った良さと使いやすさがあるので、両者を使い分けています。手箒には機能的な面だけでなく、手仕事のぬくもりといった感覚的・心情的にくすぐるものがあると思います。