鉋(かんな)でどこまで薄く木を削れるかを大勢で競い合う「削ろう会」などのイベントが、全国のあちらこちらで開かれていますが、私はまったく興味がありません。優勝者は3〜5ミクロンくらいまで薄く削るらしいのですが、だからどうした? という感想しかないです。
実際仕事で木を削る場合、手押鉋盤や自動鉋盤の送りロールや回転刃の跡(ナイフマーク)、加工中についた汚れや墨(加工する目安として引いた線や文字)、小さな当て傷などを除去するなどのために、仕上げに必ず手鉋をかけますが、その際の刃の出はおよそ30〜50ミクロンくらいです。それくらいにして削らないと目的を達成できません。1回削るごとに顕微鏡的には刃先が摩耗しているはずなので、時間的なことからいってもできるだけ回数少なく仕上げられたほうが得策です。それをわざわざ極薄にして10回も鉋がけする必要どこにもありません。
むしろ仕事では30〜50ミクロン程度の切削をいかにコンスタントに行うか、そして摩耗した刃をいかにすばやく研ぎ直すかが肝心で、極薄の削りをやっているような暇はありません。例えて言うならば、土木工事の現場にF1のレースカーを持ってきても邪魔になるだけです。欲しいのは頑丈で運転しやすい、できれば燃費もいい重機です。
ただこういうことを言うと「ふん、自分ではできもしないくせに」と批判する人が必ずいます。それもちょっとしゃくなので、先日ふだん使っている仕上鉋と砥石でいつもどおりに研いで削ってみました。できるだけ削り屑が薄くなるようにやってみたら、10ミクロンまでは可能でした。もっともそれくらい薄くなると導管が発達した広葉樹ではレースのように削り屑が切れ切れに分離してしまいます。また逆目を抑えるための裏金もそのまま装着して削っていますから削り屑が波打ちまるまって刃口に詰まってしまいます。
もしほんとうに極薄の削りを追求するなら、鉋台の調整や刃の研ぎ方や裏金の処置や削る材料など、さまざまなことをそれ用に合わせないといけないと思います。材料はよく目の通った無節のヒノキあたりがいいでしょうね。しかし私はやる気はありません。10ミクロンをさらに半分以下に落とすのはたしかに容易くはないでしょうが、どうすればいいかの見通しはつくので、それでもう充分です。上の写真はそのときのものではありませんが(撮るのを忘れた)、木屑がくしゃくしゃになったり切れ切れになっている様子は分かると思います。
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