散歩

私の散歩はたいてい夜です。夜、ご飯を食べて一段落してからのほうが時間がとりやすい、夜のほうがだんぜん涼しいということもありますが、むしろ最大の理由は夜の散歩だとほとんど他人に出会わないためです。

もっと大きな町や都市であればまたちがうかもしれませんが、小さな町では必然的に散歩の途中で顔見知りに出会う可能性があります。そうしたときにいちいち挨拶するのもめんどうだし、かといって挨拶をしなければしないで「無視された」だの「無愛想だ」などといわれかねません。なかにはよけいな詮索をする者もいます。私は人嫌いというのではありませんが、儀礼的なつきあいやこれといった目的もない獏とした人づきあいは非常に苦手です。散歩はひとりでのんびりしたひと時を持ちたいからするので、それを邪魔されたくない気持ちがあります。

コースは限られています。人家のあまりすぐそばでは夜間ですから不審者あつかいされかねないので、大きな通りでかつ交通量のあまりないところや八面川や月光川べりなど。とくに河畔は鳥やコウモリや蛙、魚等の気配がするし、水が流れる音が響くだけでも気持ちがいいです。また空が開けているので、月や星や飛行機の軌跡などもよく見えます。月光下の鳥海山の姿もまた格別です。

交通事故その他の不測の事態の回避や、ごくたまに出会う他の人を怖がらせないためにも灯りを持っていきますが、小さな懐中電灯の場合もあれば、工房で使用する強力な作業灯の場合もあります。後者の灯りだと、暗がりの中ながら咲いている花を見たり水中の魚を観察することもできます。魚も夜だと警戒心が薄くなるのか動きがゆっくりしているので、見物するには好都合。とくにハゼ類などの底魚はその形や大きさや模様などをつぶさに観察できます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA