トチノキ(栃・橡)の極上の縮み杢です。木目(年輪)とほぼ直交した横縞が四周のほぼ全面に生じています。これほどきれいな縮みはめったにありません。驚きました。この材料は友人からわけていただいたものですが、大きさは9センチ×13.5センチの断面で、長さは30センチちょっとあります。
トチノキは他の樹種にくらべると比較的縮みなどの杢を生じやすいように思いますが、それでも結果は千差万別で、いちがいにどれがいちばんだとは言えません。なににどう使うかによって向き不向きがとうぜんあります。一般的にいえば柄の大きい家具などには大きめの杢のほうが似合っているでしょうし、小さなものにはより細かな杢のほうが適しているとはいえますが、それもやはり一般論でしかありません。
縮杢とか玉杢とか鳥眼杢といった変わった紋様の木は素材としてはたいそうおもしろいのですが、反面その持ち味を「作品」に的確に生かすのは難問と感じます。一歩まちがえばくどいだけの嫌みなものになってしまいます。
下の写真はこの材の一部に定規を添えて撮ったものです。一寸(約3センチ)あたり7〜8本の縞があるのが分かります。「寸十、寸十二もある」などと材木屋さんからきいたことがありますが、それは話だけで、実物を見たことは私はありません。
いずれにしてもこのような極上の材料を手にすると創作意欲がかきたてられることだけはたしかです。