コーヒーブレーク 107 「骰子」

 

 

骰子の赤き目玉の痛そうに

[さいころの あかきめだまの いたそうに]サイコロの目はなぜか一だけが赤く着色されていることが多い。もっともサイコロ(もっとも一般的な名称としてはダイス)は種類がたくさんあり、通常の正六面体以外でも一と四が赤く着色されているものや、8面ダイスや20面ダイス、さらには120面ダイスなどというものもある。統計用乱数賽といって出目の1〜10ができるかぎり一様に出るように作られた高精度のダイスもあるらしい。いろいろなダイスを集めるのもおもしろそうではあるな。

ようようわが仲間となりぬ海市かな

[ようよう わがなかまとなりぬ かいしかな]海市とは蜃気楼のことである。山市ともいう。また蜃気楼の蜃は大蛤のことであって、昔の中国では蜃気楼は蛤(はまぐり)が吐き出す気のこととされたとか。ほんとうだろうかね? 好天無風の日に空気の温度差による光の屈折のちがいによって、海上に本来はそこにあるはずのない遠くの船や島・陸地などが見える現象のことである。/身近かなところでは、30kmほど離れた沖合にある飛島がやや浮いたかたちで見えることがあるのも蜃気楼のひとつといえるだろう。本来ならこちらの浜辺に立って島を見た場合は、地球の丸みからいってむしろいくらか島の海岸線は沈んで見えるはずなのだが、逆にすこし浮いて見えることがある。

やまならし奏でいたりて山笑う

[やまならし かなでいたりて やまわらう]ヤマナラシとはヤナギ科ヤマナラシ属の落葉広葉樹である、動物のヤマアラシと似ているがそれではない。葉の柄が長いので、弱い風でも葉がすれあってかさかさと音をたてることからつけられた名前である。/私が樹木の種類には疎いのだが、これはヤマナラシにちがいないと思ったのは、旧平田町の鋭峰である経ケ蔵山に北面の十二ノ滝コースから登ったときである。風がやや強い日のことで、急斜面の途中にある休憩地点のベンチで休んでいると、近くの樹がさかんに葉ずれの音を立てていた。ああ、山に来たんだなという思いをいっそう強くしたものである。

 

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