定番の製品として作っている置時計は当工房では1種類だけです。先日の個展(酒田市・清水屋の画廊にて11/2~8)に見本品を展示したところ、いくつか予約注文をいただきました。
材料はアメリカン-ブラック-ウォールナットです。長い名前なので通常略して「ウォールナット」と称されているものがこの樹で、アメリカ産です。クルミの仲間ですが、日本産のオニグルミなどにくらべるとずいぶん色が濃いです。まさにブラックという感じですね。気乾比重は0.64で、比較的重いほう。硬めの材料のわりには加工しやすく、接着性と塗装性も良好。乾燥したあとは狂いにくく強度と耐久性も高いです。
洋家具の材料としては古来よりたいへん人気があり、北米では数百年前から計画的な植栽と材木生産が行われていますが、人気があり需要が多いぶん材料単価はかなり高いほうの部類になります。厚手の板で無地となると80万/㎥以上するでしょう。今回のこの置時計の場合は、デザインと機能上の観点から素材厚で51mm(約2インチ)は必要なので、材料コストとしては頭の痛いところです。
下の写真は素材の板を厚さ46mmに下拵えしたあと、径約140mmにバンドソーで丸くカットしたところです。製品は前面の文字盤が曲面=球体の一部になっているので、旋盤でそれを削り出した後に、縦・横100mmほどに四角にカットします。材料的にはずいぶん無駄が出るわけですが、きれいな曲面を作り旋盤加工する際の安全面からはやむをえません。色の濃いのと薄いのとツートンカラーになっているものがありますが、外周部で後からカットする部分にクルミなどの端材を接着したためです。「幅150mmくらいの欠点のない厚手のウォールナット材」という時点ですでにかなりハードルが高いので、家具材には使えないような寸法のものをできるだけ活用するようにしています。