湧水量の変化

胴腹ノ滝はわき水ですが、天候や季節によって水量が変化します。滝は左右ふたつあり、その下の流れも大きな岩間を流れ下るので、「水路の断面積×流速から時間当たりの流量を出す」のはかなり難しいです。しかし正確な水量でなくとも写真からもその変化はおおよそ分かります。掲げた写真は上から12/21、1/25、2/1、2/27、3/7のものです。

1枚目の12/21では雪が降り始めてはいますが積もるほどではなく、滝の周辺もまだ緑色です。このあと12月末頃から降雪がだんだん多くなり、年が明けたあたりからは滝周辺もみな真っ白になっていきます。

2枚目の写真は1/25のものですが、雪が積もり始めてから約1ヶ月近く経っています。12/21にくらべ明らかに滝の湧水量が減っているのがわかります。今冬は年末から2月はじめくらいまでほぼ毎日降雪があり、5年ぶりの大雪ということで里でも雪かきに苦労しました。

3枚目は2/1ですが、積雪は5枚の写真の中では最大です。ただ水量は1/25とほぼ同じです。

ところが4枚目の2/27になると一転してまた水量が増えています。降雪も2月になってからはだいぶ減ってきて、滝の周辺にも緑がよみがえってきています。晴れの日もときどきあり、日照時間も長くなってきました。

このまま暖かくなり水量も増えて春をむかえると思っていたのですが8日後の3/7、最後の写真です。水量は1/25・2/1のレベルにまたもどってしまいました。前回の撮影のすぐ後、3月になってからまた降雪と積雪があり、気温も平地で氷点下になっていました。

さてこれだけの記録ではうっかりしたことは言えませんが、私なりの推測をあえて述べます。胴腹ノ滝の湧水の供給源ははるか上部の鳥海湖(1600m)〜万助小屋(1000m)〜渡戸(650m)といった冬期間完全に雪に閉ざされ凍結してしまうエリアからだけではなく、冬でも地面が部分的にのぞいたり、気温が緩んで積雪が解けてそのまま地面に浸透してしまうような、標高のもっと低い部分=400~250mをも少なからぬ供給源としているのではないかと思います。吉出山とその周辺、および吉出山北方の上ノ山ノ神のあたりです。

標高の高いエリアからの浸透水は胴腹ノ滝で湧水として現れるまでにそれだけ時間がかかり、途中の季節変動や月・日変動を吸収し均してしまうために、そのぶんの水量はほぼ一定して一年中流れ出します。これを仮に「ベースの湧水」とします。しかしもっと標高の低いところからの浸透水は湧出するまでの時間がずっと短いために変動を均される間があまりないまま、ベースの湧水に上乗せするかたちで流れ出すのではないか。これを仮に「オプションの湧水」とします。水温は8.4~8.7℃ほどで大きな変化はありません。

鳥海山の湧水は私が確認しているだけでも200箇所以上ありますが、水量の大小とその安定性は比例しません。胴腹ノ滝のように全体としては豊富な湧水量ながら季節や天候によって目に見えるほどに変化するところもあれば、水量はごく少ないながら年間ほとんど変化しないところもあります。その違いはおそらくどこをどう通ってその水が湧き出ているか、つまり透水層の地層の深さや岩質のちがいだろうと考えています。そのちがいによってベースの湧水とオプションの湧水の割合がそれぞれ異なるのだろうと。

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