ケヤキ材検寸

これまで当工房の手持ちのケヤキ材をいくつか披露してきましたが、いずれも杢板です。もちろんそれはそれでたいそう貴重かつすばらしいものですが、ごく小さな物ならいざしらず通常の家具サイズ以上のもので、全面にそういった特別な材料ばかりを用いたのではくどく、うっとおしく、嫌みです。コスト的にも現実的ではありません。まあ人それぞれの感覚や嗜好の問題ですが、私は家具には特別な材料はアクセント的に部分的に使ってこそその良さがひきたつと思います。

当工房ではふだんケヤキ材の家具は作りません。工房開設以来26年になりますがその間にケヤキでの作例は十指に満たないくらいです。ケヤキは昔から家具材としても非常に定評のある材料で、それゆえほとんどケヤキ材ばかりを素材に、あるいはケヤキ材をメインにもの作りをしている工房はすくなくありません。とくに伝統的な和家具中心の工房では必須の材料といえます。しかしながら、当工房のように多種多様な材料を用いて家具や小物を作っている場合、ケヤキは材料単価もきわめて高いですし当たりはずれも多く、また家具材向きのケヤキは市場にあまり出回っていないので仕入れや在庫管理も容易ではありません。つまりたいへん使いにくい材料なのです。

ただ先に述べたようにケヤキの杢板ばかり持っていても、作れるものが限定されすぎてしまうので、並材でしかも素直で乾燥もしっかりしたケヤキもすこしはほしいと思っていました。でないとせっかくのケヤキの鶉杢や笹杢・玉杢などがそれこそ「宝の持ち腐れ」になってしまいます。もちろん並材といってもそれは杢板などに比較しての話で、最低限上小クラス以上のものでないといけません。

そうしたら大阪の材木屋さんにおあつらえのケヤキの板が「訳あり」で格安で売り出されていました。詳細の一報がFAXでありましたので、一瞬迷いましたがすぐにリストの全量をいただくことにしました。それで届いたのが写真の材料です。

今すぐに使うというわけでもないのでよけいに必要なのですが、当工房では材料を仕入れた場合かならず一枚一枚あるいは一本ごとにその厚みと幅と長さと、等級や欠点などを確認し、材種ごとに通し番号を打ってそれらを台帳と材料自体にも書き込みます。サイズの大きな材料の場合は、後でいちいちひっくり返さなくても分かるように裏と表と両木口など何カ所にも記入します。写真も撮ります。仕入れてから時間が経つと、どこにどんな材料が置いてありどれを使いどれが残っているのか忘れてしまうので、しつこいくらいに記録をとっておくわけです。もちろん加工時には何番の材料をどれだけ使ったのか(全部なのか70%なのか)記録し、台帳とつきあわせて材料原価を算出します。

実際作ることが決まった場合は、現物を引っ張りださないといけませんが、見積を提示するとか、製作スケジュールのおおまかな組立をするときは材料台帳を見ればおよその見当がつきます。製作後の製品の材料コストもかなり正確に出せるわけです。

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