なんとみごとなおかしらつきのたいやき
「冷めた鯛焼はおいしくない」というコメントを某所で見て驚いた。それは元々があまり質のよくない皮と餡子だからにちがいない。むろん熱々の鯛焼がおいしいことは確かだが、上等な鯛焼は冷めてもそれはそれでまたおいしい。基本的に私は餡子ものが大好きだな。バターとクリームをたっぷり使った洋菓子もおいしいが、萬頭その他で上質な餡子に遭遇するとしみじみと幸せを感じる。/鯛焼とは関係ない話だが、魚を皿に盛りつける場合、頭が右か左か、背が上か下かで、いろいろな「流派」らしきものがあるらしい。そのほうが身をほぐしやすいとか骨を外しやすいといった理由はあることもあるが、主観もだいぶ混じっている。個人的な嗜好であればなんだろうといっこうにかまわないのだが、それをもっともらしく理由をつけて伝統云々や正否で語りだす人もいるので呆れてしまう。/私個人は頭左向きの背が上というごく普通のスタイルがいちばんしっくりする。食べるときに頭や内蔵や骨をきれいに外し、食すことができる部分はすべて余さずきれいに食べることを自分に課している。
無人爆撃機といえど初乗の
いわゆるドローン(drone)である。もともとは軍事用に開発された自律飛行をする小型の無人飛行機=UAVのことだが、いまでは民間・商業用にも急速に普及しつつある。むろん言うまでもないことだが、本来のドローンは超精密機器の塊で、偵察のみならず爆弾やミサイルを搭載した強力な爆撃機として運用されている。GPS等を駆使して自分自身で飛行し、1万キロ以上も離れたアメリカ本土から画面を見ながら相手をボタンひとつで粉砕するなども朝飯前。ゲーム機器で戦争ごっこに興じているのと基本原理はほぼ同じようなものか。/ドローンの登場は従来の戦場における熟練兵士の損失を避けるためという理由もあるようだが、”パイロット”には高度のテクニックが要求されるそうなので、だれでも簡単に操縦できるというものではない。爆撃機としてのドローンは機体本体だけでなく周辺機器や運用システムも含めると一機あたり数百億円だとか……。
もう目覚めないかもしれず山眠る
俳句を多少ともされている方にはいまさら言うまでもないが、「山眠る」は冬の季語。同様に「山笑う」が春、「山滴る」が夏、「山粧う」が秋の季語とされる。夏が「滴る」となっていることにすこし違和感があるが、それは一般的な俳句歳時記では5〜7月(立夏〜立秋前日)を夏としており、6月頃の梅雨を含むからかもしれない。ちなみに「滴り「滴る」自体も夏の季語で、地中からしみ出した水が崖などの岩肌を伝って落ちる雫のことをいう。暑い時分だからこそ湧き出る水に涼しさをよけいに感じるということだろう。/さて前にもどるが、新暦5月5日頃から8月7日頃までを夏とする「二十四節気」はほとんどの人の生活実感からは乖離している。5月の連休の頃はたしかに暑い日もあるとはいえ、それはよく晴れた日の限定的なもので、野山の緑もまだ伸び始めであり海川の水はまだ冷たい。朝晩は涼しい。日によってはストーブがほしいと思うほど肌寒いときもある。全体としてはまだ春の気分であって、とても夏とはいいがたいであろう。/さらに問題なのは夏が終わり秋到来とされる立秋のほうで、8月7日頃は言うまでもなく暑さ真っ盛りである。お盆をすぎ下旬あたりからはさすがに朝晩は涼しい日もあり秋めいてきたと思うこともあるが、8月7日あたりで秋だよというのは無理がありすぎるだろう。あるいは敗戦日の8月15日を秋だと思う人はまずいないのではないか。これはまちがいなく夏です。/結局、俳人は己の皮膚感覚や生活実感よりも、歳時記という他人がこしらえた”マニュアル”を優先している人が多いのだろう。「自然の移り変わりに敏感になる」云々と言うが、むしろ私にはそれはどこかの権威に感覚や思考をおもねてしまう鈍感さ臆病さご都合主義の表れの最たるものだとしか思われない。