女鹿の波打際の湧泉

 

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山形県の北西端にある女鹿(めが)集落の湧水というと、「舟」と呼ばれる多段式の水槽の、神泉ノ水(かみこのみず)ばかりが有名ですが、じつはそこから100mばかりはなれた海の波打際にもたいへん興味深い湧水(湧泉)があります。

女鹿漁港の一画ですが、海岸の崖面の裾から大量の湧水が流れ出しており、小川となって海に注いでいます。写真で左上が日本海。もちろんしょっぱい海の水です。それに対し右側の5m角ほどの静かな水面が湧水で、なんと9.6℃という非常に冷たい淡水です。だいぶ前の計測値ですが、神泉ノ水の源泉の温度が11.2℃なので、それより標高の低い(約30mに対し0m)波打際の湧泉のほうが1.6℃も低い。これは明らかにふたつの湧泉は地層を異にするということを物語っており、波打際の湧泉のほうがより標高の高い地点を主な涵養域としているということです。

現在は女鹿集落には広域の上水道が敷設されていて、写真の湧泉は生け簀のカキを置いておいたり、いろいろなものの洗いものに利用されているだけのようですが、かつては集落の貴重な生活用水水源としてこの湧水をポンプで住宅地まで揚げていました。

水が湧いているのは地上だけではなく、そのまま連続的に海の中にも湧泉が数多くあります。釜磯・滝ノ浦・女鹿、県境を越えた長磯・沓掛海岸の一帯まで、海の底から大量の水がわいていて、総合地球環境学研究所の谷口真人教授によれば世界屈指の海底湧水(数値的におそらく世界一)であることはまちがいないようです。

 

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