コーヒーブレーク 49 「原生林」

 

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春昼の光敷きつめ原生林

原生林あるいはジャングルというと樹木がうっそうと生い茂っていて昼なお暗いというイメージがある。しかし現実には陽光がある程度差し込まないことには植物は光合成ができないので、それほど真っ暗なわけではない。繁茂の密度にしても森林の際こそは隙間なく草木が生えており密度が非常に高いが、すこし森の中に入れば下生えは急速に薄くなりむしろ歩きやすくなるというのが通例である。つまり背の高い樹木がしっかりと生えている場合は林床にあまり陽が届かないので、灌木や草類にとっては繁殖するには厳しい環境だからである。/ただしその高木が落葉広葉樹の場合であれば、春先はまだ葉が伸びておらずそれでいて冬にくらべれば日がずいぶん長くなっているので、林床は意外なほどに明るい。上の写真は鳥海山の鶴間池周辺のブナ林であるが、まだ残雪もあるなか、ブナの若葉が目がさめるほどに美しくきらめいている。

仔蟷螂あまさず蟻に連れさられ

カマキリ(蟷螂。とうろう)は昆虫のなかでもいちばんに獰猛で強いと思われている。たしかに成虫のカマキリは動くものはなんでもすばやく大きな鎌で捕え、すかさずむしゃむしゃ食ってしまう。捕捉率も高そうで、カマキリに狙われたらもうアウトという気がする。/しかしそれはあくまでも大きな成虫のカマキリの話である。まだ小さく幼いカマキリには敵がたくさんいる。ひとつの卵鞘には200〜300くらいの卵が入っているが、それほど多くの卵を産むということは無事に成虫となって次の世代を残せるカマキリはごくわずかしかいないということの証左である。一固体にかぎるなら全滅ということも珍しくないだろう。

足の指十本そろうて青き踏む

裸足になって外を歩くとたいへん気持ちがいい。柔らかく背丈の低い草が一面に生えた野原であればもう最高である。靴を履いた場合とはちがって、足の指で地面をじかに触っている、つかんでいるという感触だ。山登りでも、平地での歩行や散歩でも、ほんとうに理想的な無理のない自然な歩き方のコツをつかむには、いちど靴を脱いで裸足で歩いてみることだ。よくいわれるような、背筋をのばして膝をのばして大股で腕を振って、なんてのはまったくの嘘っぱちであることがすぐわかる。あれは軍隊の示威的な行進であり、あるいは他者の目から見ての美しさを優先するという倒錯した美意識のあらわれでしかない。/快適で無理のない歩き方とは、背筋や膝をはじめ全身のどこにも無駄な力を入れず、歩幅は小さ目に、蹴り出しではなく一歩ずつゆっくり重心移動という感じで歩をすすめることである。地面からの反作用は足・踵・膝・腰・背中・首と、全身をクッションにして分散して柔らかく受け止める。歩くのに基本的に腕は使わないので、腕を振るのは無駄な動作である。

 

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