ウッディ専科 32号

 

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工房の事務室から出てきた古い雑誌です。婦人生活社から平成5年=1993年に発刊された季刊誌です。当時はアマチュアの木工熱がかなりさかんで、同じ婦人生活社の『手づくり木工事典』、山と渓谷社の『ウッディライフ』をはじめ木工関連の雑誌がいくつも出ていました。なかにはまったく初歩的、日曜工作の域を出ないものもあり、プロはもちろんハイアマチュアでさえもほとんど役に立たないような雑誌もありましたが、そうした中ではこの『ウッディ専科』はわりあい硬派で本格的な作りの雑誌だったと思います。表紙はオークビレッジの代表の稲本正さんですね。

当時は当工房も弟子やアルバイトの女性もいてそれなりの売り上げもあり、それにともなって個展やグループ展に参加したり、雑誌や新聞・テレビなどに出たりということも珍しくありませんでした。そのためか上記の木工関係の雑誌からもいくつか取材のオファーを受けています。『ウッディライフ』についてはその別冊版である『手づくり家具作家図鑑』に載った件を、当ブログの記事にしています(2014.3.13)。

さてこの『ウッディ専科』32号には36〜47頁の12頁にわたって木工房オーツーの記事が載っています。本号の特集が「プロが教える家具づくり」とあるとおり、その頃全国的に比較的名の通った木工房から5カ所がピックアップされて、ひとつの家具を作る過程全般を実地で細かく追って解説しています。オークビレッジはテーブルを、KAKI工房は椅子を、南南西の風はベンチチェストを、北の住まい設計社はハンギングボード(吊戸棚)を、そしてわがオーツーはコレクションボード(飾り戸棚)を製作しました。

ほかはどうだか知りませんが、少なくともこちらでは「広告料」はいっさい出していません。逆に「取材協力費」だったかの名目で、完成品の通常の売値相当のお金をいただいています。

 

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これが最初の頁ですが、22年も前のこととあって、私もずいぶん若々しいです。冒頭で工房の基本理念を語っています。若干気負った物言いにはなっていますが、今ととくに変わってはいませんね。左の頁にはこの時に製作してほぼ完成したコレクションボードが写っています。幅700mm×奥行190mm×高さ1450mmとけっこう大きなサイズの家具です。背板はコレクションが映えるように黒く着色しています。

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これは実際の製作の様子を細かく撮影してもらったものです。ほんとうは養生期間を除いた正味の作業時間だけでも1週間はかかるのですが、東京から泊まり込みで取材に来たクルーをそんなに待機させるわけにはいかず、最初の木取と下拵え、最後の塗装は省略しています。それでもつきっきりで加工を84工程・6頁ぶんにわたって撮影を強行したのでたいへんでした。製作の主要メンバーが私もふくめ3人いたからこそ可能だったのですが、取材の前後も朝早くから夜遅くまで作業していた記憶があります。

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無事にコレクションボードの製作が終わり、完成写真とメンバーの「記念写真」も撮ってもらいました。あとは作品展用などに現物で保管していた家具8点ばかりを別の場所で撮影。誌面構成上、足りない部分はこちらで写したものを数点編集部に送りました。上2枚の写真はその「作品例」の紹介の頁です。それぞれサイズや価格も書いているのですが、今と比べても値段的にはほとんど変わっていないことを痛感します。つまり1990年前後といえばバブル経済の時期だったわけで、材木の単価こそ現在より低いものの、人件費を含めた加工賃のほうは逆に今より当時のほうが高めだったかもしれません。

さて、あらためて特集全体に目を通してみたのですが、登場した5つの工房のうちで、親方というか代表者が実際にほんとうに作ってみせているところは当工房と北の住まい設計社だけで、ほかはお弟子さんか従業員の方が作っているんですね。世間一般の「手作り」のイメージとは異なるわけです。むろんそれが悪いということではなく、経営的観点でいえばそのほうが正解ではあるのでしょう。親方がいつまでも製作の現場にはり付いていたのでは、会社としては伸びていきませんから(ははは……)。

 

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