ずっと昔24年前に当工房で個展用に製作し、お客様にお買い求めいただいた抽斗15杯のトールチェストを、2つのデスクワゴン(左側)と1つの飾台(右側)とにリメークしました。抽斗の前板はすべて異なる樹種の広葉樹の無垢板で、これはそのまま再利用。本体はクルミでまったく新たに作りました。
前身のトールチェストでは色の最も薄い抽斗を上に、最も色の濃い抽斗を下になるように順に並べたのですが、リメーク品では全部をそのとおりには並べることはできませんでした。新しいものでは3段目の抽斗は、本体の歪みを抑えるために中板が入っている関係で他の抽斗より内部が20mmほど薄くなっています。したがって3杯あるその抽斗はワゴンでも飾台でも中央にもってこざるをえないからです。
また直射日光にはさらされてはいないとはいえ、20年以上も経つとけっこう色がやけてくるのですが、その程度は樹種によってかなり差があります。はじめはかなり白っぽかったものが同じ樹種とは思えないほど急速に濃くなったり、年月が経ってもさほど色味は変化しなかったり、逆にはじめの頃より若干淡くなったり。その意味では経年変化(変色)の期せずしてかっこうのサンプルともなりました。
サイズはワゴンが幅390mm、奥行425mm、高さ650mmで、下に4個の自在キャスターがついています。飾台のほうは幅394mm、奥行415mm、高さ823mmです。抽斗の前板の大きさは幅330mm高さ110mmですが、痛んでいた革製の取手は木製(クルミ)の把手に交換しました。前の把手の穴隠しも兼ねているので、見た目のバランスとしてはやや大きいですね。
無垢材だけでできている家具はこの例のようにリメークが可能な場合が多いのですが、まったくの新品よりもかえって手間がかかる場合があり、仕上がりもどうしても新品ほどにはきれいに精緻にいかないことがあります。上のワゴンと飾台でいえば、インセットの抽斗はもともとが本体に入れ込むときに微妙に個々に削りあわせているためにわずかながら寸法が異なります。その抽斗を新しい本体にまたインセットで納めているので、抽斗ごとの差は倍化することになります。通常このサイズの抽斗であれば本体との隙間は上下で1mm以下、左右で0.3mm程度なのですが、今回はすべての抽斗をそういうわけにはいきませんでした。