※※ タイトルの入力が先日来うまくいかないので(ブログソフトのバグ?)、とうぶんの間「タイトルなし」とし、本文冒頭に見出しをすこし大きく付けることで代用とします。
出羽富士ではない
一昨日の鳥海山です。20代の10年間ほどをのぞいて、生まれてからずっと私はこの山を眺めながらこの山の麓で暮らしてきたわけですが、見るたびに美しいと思います。
鳥海山をいまだに「出羽富士」と称し紹介する人がいますが、私はそれはちがうだろうと思います。まず出羽と言われても地元や近隣の人でなければいったいどこの地方のことを指しているのかよくわかりません。出羽の起源は古代の行政区分であった令制国のひとつということのようですが、今さら大昔の政治区分でもなかろうと思います。
もうひとつは富士ですね。いうまでもなくそれは富士山のことで「地方の富士山に似た山」という意味なわけです。はじめからもう富士山に軍配を上げてしまっている。しかし火山で独立峰であること以外にとりたてて富士山と鳥海山とに共通項はありません。上の写真をみても明らかに富士山とは姿形が違います。これを出羽富士と称するのはいくらなんでもこじつけであり謙遜しすぎで、もっとわるくいえば「負け犬根性」というものです。鳥海山は鳥海山でそのままでよく、わざわざ富士山の二番煎じみたいな言い方をする必要はどこにもありません。
さらにきわめて現実的な事情をいえば、多少とも山岳に関心があり登山をする人たちにとって鳥海山はきわめて有名な山です。北海道・東北エリアで人気投票をするとたいてい北海道の大雪山とならんで一番人気。遠隔地の人にとっては山形も庄内も酒田や遊佐、そして出羽という名前は知らなくても「鳥海山に麓に住んでいる」といえば一発でうなづいてもらえます。つまり地元と他所の人とは大きな認知差があるということです。「出羽富士の麓に住んでます」とか「この前出羽富士に登りました」などと言ってもほとんどだれにも分かってもらえません。
詳しい数字は忘れてしまいましたが、昨年か一昨年かに鳥海山に登った人の数は13万人だったとかで、山形県内の他の高峰である月山や蔵王山、朝日連峰などをはるかに抜いて一番多いのです。それはそれでオーバーユース(特定の山の特定のコースと時期に登山者が集中しすぎる)の問題があるのですが、それほどに鳥海山はいまや全国的に著名な山ということです。
みなさん出羽富士などというへんな呼称はもうやめましょうよ。