一人二役なり己に豆をまく
「鬼は外、福は内」とばかりに豆を撒くのも節分の行事のひとつ。「福は外、鬼は内」と唱えることもあり、他の掛詞もいろいろあるようだ。豆(大豆)は正月の黒豆といい「まめに暮らす」ということでなにかと出番が多い。何が鬼で、何が福ノ神なのか明らかであるのなら話は簡単だが、実際のところは人により時と場合によりさまざまだろう。同じ人間が鬼にも福にもなる。/豆撒きでまく豆が大豆ではもったいないとか不衛生である、拾いきれなかった豆が後日の掃除で黴だらけになって発見されるということやらで、今はごく小さなパックになったピーナッツやでんろく豆などを撒くのもふつうになってしまった。
雪しまき平成はやはるかなる
「し」は雪の古語であるという。巻くような雪ということで、つまり吹雪だ。きのうも猛烈な地吹雪で、ほとんど視界がきかず前の車もみえないホワイトアウトだった。そんな中、ヘッドランプも点けず走っている車もときおりあってびっくりする。危ないなあ。自分の車が他者からどう見えているのかを認識しない、自分からの一方的視線しか持たないあほうである。/中村草田男はかつて「降る雪や明治は遠くなりにけり」と詠んだが、平成という年号もすでに26年目。平成生まれの中学生高校生がいることに軽いショックを覚えたのもすでに昔の話だ。
底冷えや肉球の桃色なれば
うちには猫が一匹いる。名前はトント、じきに10歳になる。白地に茶トラ++雉子トラ+アメリカンショートヘアの不規則で渦巻く模様のミックスという具合だ。まだ若い猫のときに迷い猫(捨て猫?)だったのを保護した雑種である。膝に乗ることやひっくり返ってじゃれるのも大好きで、ブラシ掛けや爪切りもまったく嫌がることがない。猫によっては、たとえばもう死んでしまったが以前の飼い猫のミャースケやマーブルは逆で、ブラシや爪切りばさみを見ると後ずさりして逃げていった。それでも、前脚の爪はときどき切ってやらないと飼い主にも危害が及ぶおそれが大なので、無理やり押さえつけてでも爪を切るのだが、それはもう一仕事であった。それにくらべるとトントはとっても楽。膝の上でしずかに仰向けになってなすがままにされている。爪は猫にとって最上級に大事な武器・道具のはずなので、そんなんでいいのかという気もするが。ちなみにトントという名前は昔の映画『ハリーとトント』という題名から妻がとったもの。そっちのは雉子トラでしたけどね。
鳥海山月山の白山となりて冬うらら
2月はこの地では厳寒期であり降雪の日も多い。俳句では伝統的には2月はすでに春とされるのだが、まったく冗談じゃない。しかしながら冬至は1ヶ月以上も前にすぎて日が長くなりつつあるのは実感するし、たまに快晴の日があると真っ白な野原や山がみえてすばらしい景色があらわれる。鳥海山と月山は庄内平野からのぞまれる大きなふたつの山で、どちらも標高2000m前後の独立した火山である。日本海にほど近い位置にあるので降雪量はたいへん多く、冬は真っ白になる。