15杯の抽斗

DSCN1059_2

 

23年前に製作した15段のトールチェストをリメークします。お客様がご自宅の大がかりなリフォームをされているところで、それにともなってダイニングテーブルの甲板塗り直しや、このチェストを上下に三分してデスクキャビネットと玄関の飾台などに作り替えるというものです。小さめのデスクも作ります。

15杯ある抽斗は幅330mm高さ110mmの大きさですが、前板の材種はすべて異なります。上段左から下段右に向かって順に、ホオ・ヤマザクラ・キハダ/トチ・イタヤカエデ・オニグルミ/セン・ドロヤナギ・エンジュ/カツラ・サワグルミ・ケヤキ/クリ・ブナ・ミズナラ。製作時は色の濃い順に下から上に配置したのですが、23年も経つとすっかりやけてあまり色の差がなくなっています。いわゆる「飴色」ですね。

15種類の材は、いずれも当工房で他の家具にもわりあいよく使っているものなので、色は変わってもなんの木か分かりますが、一般の方にはほとんど区別がつかないかもしれません。種類の見分けは自分が実際に使っていてこそであって、ちょっとよそで見たことがあるとか写真でしか知らない場合はやはり難しいです。とくに大きな板等であればまだしも、小さな木片になってしまうときわめて困難。

色合いの変化の仕方は一様ではなく、色が濃くなる速度とパターンは異なるし、最初と後とでそれほど大きな差がないものとまったく別の材と見間違えるほど変わるものがあります。だいたいの材料は年月が経つにつれ色が濃くなるのですが、なかには逆に淡くなってくるものもあります。上の例ではエンジュがそうですし、最近家具材として人気のあるアメリカン-ブラック-ウォールナットなどがそれです。

このことから思うのは、ひとつの家具で色あいや濃度の異なる材種を組み合わせるというデザイン的手法は、あまり効果がないし難しいということです。よほどうまくやらないと逆に作為が鼻につくでしょう。とはいえ上の写真でも明らかなように数十年経ってもそれでもまったく同じにはならないという微妙な差異を、あらかじめ計算して使うという高度な手法はあるかな、です。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA