ずらりと並んだクロガキ(黒柿)の板。横幅で合計1.4m、高さは1.8mくらいですが、枚数にして10数枚あります。しかもその多くは黒柿の杢のなかでも最高峰といわれる孔雀杢です。ただしこの「集合写真」ではよく分かりませんが、杢のところにあいにく干割れが生じているものが少なくないのがまことに残念でなりません。
孔雀杢等の極上杢ではない、もっとふつうの黒柿ならもうすこしありますが、いずれにしろ防腐・清澄剤などに柿渋をほとんど使わなくなった今日では、黒柿は少なくなる一方です。超希少材といっていいでしょう。黒柿は古来より銘木中の銘木として重用されてきたこともあって、単価的にも世界でもっとも高価な木材のひとつです。
私はとりわけこの黒柿が大好きで、これを用いての製品をいろいろ作ってきました。しかし私が木工房オーツーを設立した28年前と比べても、黒柿はおどろくばかりに品薄となり値段が上がっています。銘木店に問い合わせても価格以前にもの自体がまずありません。たまにあってもサイズがごく小さなものや、孔雀杢などには及びもつかない並杢や染み同様のもの、未乾燥材といったことが大半です。
カキノキは本来は年輪が目立たない白っぽい散孔材で、黒柿の黒い紋様はいわば異物。そのためでしょうか、みごとな杢だと思うとちょうどその杢のあたりに割れが入ることが多いのです。黒柿は乾燥がきわめて難しい材料です。今もしこの孔雀杢の板が干割れや染みや腐れといった欠点がない材料ならば、ずっと昔ならともかく現在ではこの写真ほどの量だけでウン百万するかもしれません。無欠点の孔雀杢の6尺板一枚が30万といったところかな。
私がこうしてブログに黒柿のことを書くと、決まって「ぜひ材料を譲ってほしい」という方が現れます。しかしながら、そもそも私は材木商ではありませんし、ほかに売るほどたくさんの黒柿を持っているわけでもありません。たとえば上の写真の孔雀杢はすこし欠点があるとはいえ、私には虎の子中の虎の子です。今手放してしまったらもう二度と入手できない可能性が大です。申しわけありませんが、黒柿は売ることはできません。