横切用治具 その1

じつは当工房には横切盤がありません。アマチュアならともかく、プロの工房に横切盤がないのは尋常ではありません。横切盤というのは据置型の大型電動丸ノコ機の一種で、名前の通り1m×2mといった大きな材料を台にセットして、その台ごとスライドさせて材料を切断する機械です。木材を切るための丸ノコ機械のもっとも基本的な「昇降盤」に、さらに横切り用のスライドテーブルを付加したものといっていいでしょう。

材料を縦に挽き割るのは昇降盤で行い、さらにそれを横方向に切断したり溝をつけたりするのを横切盤で行うというのが標準的な作業手順です。ただ横切盤はその構造上、とても幅をとります。機械の周囲にも材料を持って歩くだけのスペースが必要なので、横切盤1台で少なくとも4畳半くらいの空間が必要になります。当工房でも材料等をもっときちんと整理すればそれくらいのスペースを確保できないこともないのですが、手製の横切用治具でいちおうなんとか間に合うということで、開業当初から結局そのまま今日まできてしまいました。また2.7mまで切れる特大のパネルソーがあり、大物の切断はそれでできることもあってよけいに横切盤とは縁遠くなっています。

写真はその自作の横切用治具です。テーブルは50×90cmほどで、これを昇降盤の上に置き、定盤に刻まれてある蟻溝に沿って前後にスライドさせることで材料の加工を行います。見た目はひどくチープですが、切断精度は1/20mmくらい出ているのでじゅうぶん実用になります。ただし材料を押さえながら治具ごと動かすので、高速回転する刃が手元近くに位置することになり、うっかりすると大怪我してしまいます。

これまで実際これで怪我を負ったことはありませんが、正直のところヒヤッとしたことはあります。そこでより安全を期すために刃の前後にカバーを付け加えました。手元の透明なプラスチックは冷蔵庫で以前使っていた冷水ボトルをカットしたもの、奥のコの字型の覆いはクルミの板で作り、スライドテーブルに2カ所ネジ止めにしています。この横切用治具では最大で厚み約60mm、幅400mm、長さは軽いものなら1800mmくらいまでは切ることができます。ただ角度切りは原則できないので、その必要があるときはさらに別の治具を追加でセットします。

材料の長さがきっちり正確にそろっており、木口が正確に直角に切れていれば、その端部自体がその後の加工の基準面になります。いちいち墨付をしないでもストッパーに端部を押し当ててホゾの胴突きを取ったりできます。もっともストッパーのセッティングにも厳重に注意するべきことがありますが、それはまた後日書くことにしましょう。

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