コーヒーブレーク 105 「ふらくたる」

 

 

春耕や大興安嶺法に魚の骨

[しゅんこうや だいこうあんれいに うおのほね]大興安嶺は中国満州・内モンゴルにある長さ1200kmほどの火山山脈である。最高峰が2036mで、あとは1200〜1300m程度のそれほど高い山脈ではない。とここまで書いてみたが、よく考えてみれば1300mクラスの山々といえば、秋田県から山形県にかけて連なる神室山地と同じくらいの高さがあり、しかも神室山地の長さ30kmほどに対し大興安嶺は1200kmである。神室山地が40個も続いていると思えば、やはりたいした山脈なのだ。/大興安嶺という名前が既視感が強くあるのはやはり日中戦争の記録があるからで、行軍にせよ日本の軍用機による中国大陸内奥の爆撃などのドキュメンタリーを読んでいると、しばしばこの山脈の名前が登場する。

ふらくたるふらくたる蛇穴を出づ

[ふらくたる ふらくたるへび あなをいづ]自然の風物を観察していると、とくに動植物に顕著であるが、ある部分の形がもっと大きな部分や全体の形とよく似た形をしていることに気づくことがある。サイズを変えながらパターンがどこまでも連続していく。このような部分と全体とが自己相似形をなしているような図形をフラクタル(fractal)図形という。フランスの数学者マンデルブロが導入した幾何学の重要な概念である。/フラクタルというアイデアを採用した絵画やアニメーションをじっと見ていると、距離や大きさや物量の感覚がしだいに歪んできて、とても落ち着かない気分になることがある。登山などに必携の1/25000の地形図でもフラクタルとはいえないまでも相似的な形はよくあらわれ、ルートや地形の確認をするために長い時間地図を凝視していると、その仮構の世界にひきずり込まれるような気持ちになることがある。平面のはずがある瞬間、急に立体的に見えてくることも。

轟沈も撃沈もありぬべし笹の舟

[ごうちんも げきちんもありぬべし ささのふね]軍艦が敵から攻撃を受けて被害が生じた場合、その程度によって小破、中破、大破、撃沈、轟沈といろいろ名称があるらしい。逆に攻撃する側の視点からいえば、理由はなんであれ戦闘不能にした場合は、ひっくるめて撃破というのだとか。たしかに外目には、どのくらいの損壊をあたえたかは沈没してしまった以外はよくわからないので、まったく反撃してこないという時点で撃破したということになるのであろう。精神&根性主義と、スーパーリアリズムと。

 

 写真はヤブコウジの実。背丈はせいぜい15〜20cmくらいだが常緑矮性の樹木である。雪が溶けた春先はとくにこの赤い実がとてもよく目立つ。サクラソウ科ヤブコウジ属。)

 

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