コーヒーブレーク 91 「しずしずと」

 

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しずしずとそそくさと蛇穴に入る

[しずしずと そそくさと へびあなにいる] 一昨年だったか動物園で飼っているアオダイショウを手に持ったり首に巻いてもらったりしたせいか(動物ふれあい特別イベント)、以前ほどは蛇に抵抗感がなくなった。マムシだけは数メートル以上の距離をおかないと向こうからとびかかってくることがあるので厳重注意だが、ほかの蛇であればこちらが友好的な態度でいるかぎりだいじょうぶである。落ち着いてゆっくりと、かなり近いところから観察することができる。もちろん動物園の人慣れしたアオダイショウなどとちがって野生の蛇にうかつに手を出すとかまれることがあるのでやめるべしというのは件の動物園の飼育係の言である。

願いごとはなし月面に流れ星

[ねがいごとはなし げつめんに ながれぼし] 流れ星は尾を引くからこその流れ星である。宇宙をただよう数ミリから数センチ程度の小さな塵が大気に飛び込んで摩擦で高温になり気化。そのさいに大気の成分や気化した塵の成分が発光する。したがって空気がないところでは流れ星が流れ星になることもなく、いきなりずどんと他の天体に衝突するわけである。/月にも大気がないわけではないが、あまりにも薄いので実際上真空とみなしてもいいほどだという。なにしろ人間が作り出しうる真空度よりもっと高い真空、つまり物がほとんど存在しない空間である。

石なべて正座するなり秋の水

[いしなべて せいざするなり あきのみず] 秋になると河川や湖沼の水が澄んできれいになる、というのはたぶん思い込みにすぎないだろう。秋といえば台風のシーズンでもあり、梅雨の再来かと思うような秋の長雨もある。すこし強い雨が降ればとうぜん水はすぐに濁ってしまう。しかし10月にもなれば気温はずいぶん下がってくるので、水中の有機物のバクテリア等による分解も少なくなり、草木ももう枯れてくるので、晴天の日であれば流水はたしかに明るくきれいに澄み切っているように見えなくもない。/澄んだ水といえば、やはりどうしても脳裡に浮かんでくるのは数十年前の牛渡川である。鳥海山からの湧水が大量にわいて流れている遊佐町の小さな河川だが、30年ほど前は光線のかげんによっては水面がどこだかわからないくらいに澄んでいた。現在でも他の河川にくらべれば水はきれいなのだが、昔はその比ではなかったのである。夜は魚も岩陰から開けたところに出ていることが多いので、その観察のために明るいライトを持って仲間としばしば出かけたのだが、水面の位置がよくわからないので、ついライトの先を水に突っ込んでしまうことがあった。

 

※ 写真はたぶんトラマルハナバチと、クマツヅラ科の典型的な海浜植物であるハマゴウの花。釜磯にて。2016.10.3)

 

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