釜磯のポットホール

 

鳥海山が西側で日本海に没するところにある釜磯ですが、海岸の砂浜や溶岩の隙間から、さらには海の底からも大量の湧水が出ていることで有名です。その釜磯にはこれまで個人的な調査や海水浴、他の人を湧水に案内するなどして、これまで数えきれないほど通っているのですが、1ヶ月ほど前に初めて知ったことがあります。それがポットホールです。

ポットホール(pot hole)は日本語では甌穴(おうけつ)といいます。甌はかめのことで、川底や川岸・海岸などで岩石の上に生ずる円形の穴のことです。かめ自体がいまはあまり用いられなくなったことや、読むことはできても書くことができない人が大半と思われる類いの漢字のためか、いまは英語のポットホールのほうが普通の呼称になっているようです。

岩石に割れ目などの弱い部分があるとそこが水流によって削られてくぼみとなります。いったんくぼみができると、その穴にたまたま入り込んだ礫が水流によって渦巻き状に回転し、周りの岩を削っていってさらにくぼみを大きくしていきます。

ポットホール自体は他の磯浜や河川で何度も見たことはあるのですが、この釜磯のポットホールは形が非常に整っていることや直径80cm深さ60cmほどと比較的大きいこと、そして特筆すべきことは1804年の象潟地震で山形県と秋田県の県境付近の南北両側の海岸が1.5〜2.5mほど隆起した証拠である可能性が高いことです。象潟の「九十九島」は浅い汽水湖に百以上の小島が浮かぶ、宮城県の松島とならび称されるほどの景勝地だったのですが、地震で一夜にして陸地化してしまいました。

現在の海面は1枚目と3枚目の写真に写っているようにポットホールから2mくらい下にあります。つまり現在では海がものすごく荒れたときに波しぶきをあびることはたまにあっても、ふだんは波による浸食はほとんどありません。それなのにこんな高い位置にポットホールがあるのは、やはり1804年の激しい地震であたり一帯が一気に持ちあがったからでしょう。それまではおそらく海水面ぎりぎりくらいの位置にあったと思います。(※ 海水の作用によってできたので、正確には海蝕甌穴というそうです。)

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上から見下ろしたポットホール。穴には雨水がたまって、なにやら小さな虫がいっぱいいた。

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底がよく見えないのと、深さや穴全体の形状などを確かめたかったので、バケツで水をかいだした。すべすべのじつにきれいな窪みで、まさにポットホールである。雨が降ればまたすぐに水がたまるだろう。

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ポットホールより一段高いところにもポットホールになりそこねた浅いすべすべした窪みがある。わずかの高低差が、海蝕の強度の違いとなって表れたことがわかる。

 

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