1月下旬から取りかかっていた、旋盤(木工ろくろ)を駆使して製作していた7点の被蓋くり物です。厚板を掘り込んで器にするので「くり物」の一種なのですが、主に旋盤を用いてこしらえた場合は伝統的には「挽きもの(ひきもの)」とも呼ばれ、他の手法によるくり物と区別されることも多いです。
今回の被蓋くり物は10月に行う個展に出品するものが中心ですが、一部に先年からのご注文の品も含まれています。材質は黒柿、イタヤカエデ縮杢、オニグルミ変杢=鶉杢(うずらもく)、トチ縮杢+スポルトの4種類。大きさは直径で10〜12cmほどですが、素材の厚さや杢の表情に合わせて曲面の程度や面取りの大きさなどはみな変えています。
また仕上げの塗装は黒柿とイタヤカエデは艶ありの鏡面塗装、オニグルミとトチは半艶(5分消し)塗装としています。艶があるほうが杢が映えるものと、すこし艶を抑えたほうがいいものとの区別です。内側はすべて艶消し(全消し)塗装です。
※ 寸法や材質・特徴などはそれぞれの写真の下に記していますが、販売価格については個展開催の直前にならないと確定しません。それでも製作原価から計算してのおおよその値段はわかりますので、仮予約という形での予約は受け付けています。ただし納品は展示会が終了してからになります。ご興味のある方はメールにてお問い合わせください。
No.511 黒柿丸形被蓋くり物 サイズ直径113×高さ41×実の深さ26mm ゆるやかに膨らんだ蓋の全面にきれいな黒〜濃茶色の紋様が出ており、側面を中心に孔雀杢も。黒柿のなかでも最高級かつ稀産の材料です。実(み)のほうは対照的に黒がほとんど入っていません。外側は鏡面塗装、内側は艶消塗装(計10回くらい)をおこない、最後に表面には磨きもかけています。
売切れ
No.512 黒柿丸形被蓋くり物 サイズ直径112×高さ42×実の深さ26mm 上の511と同一の材料から作ったもので、寸法と形状もほぼ同じ。連続した隣り合わせの素材ながら、杢の表情は微妙にことなります。蓋の側面を中心にみごとな孔雀杢も表れています。 売切れ
No.513 黒柿丸形被蓋くり物 サイズ直径102×高さ29×実の深さ18mm 上の二つとは異なる板から取った黒柿の蓋物。素材がやや薄いので、それに合わせて蓋の膨らみは上のものより控え目にしています。手の平におさまるすこし小ぶりな品。直径が10mmほどちがうだけで、見た目にはだいぶコンパクトに見えます。蓋の上面と、側面の一部まで細かな杢。同じ黒柿でも511&512とは雰囲気がちがいます。実(み)は全体に黒みがうっすらとかかったグレーっぽい感じです。 売切れ
No.514 板屋楓丸形変形被蓋くり物 サイズ直径123×高さ41×実の深さ26mm 材料のイタヤカエデは国内の楓類のなかで最も大きくなる樹木です。秋に黄葉します。細い筋は年輪ですが、それに直交する縞模様は縮み。見る方向や光線の当たり具合で模様がかなり違って見えます。蓋は中央と周辺がすこし盛り上がり、中ほどがすこし凹んだ目ん玉形状。以上4点は艶有塗装。
No.515 鬼胡桃鶉杢丸形被蓋くり物 サイズ直径115×高さ46×実の深さ26mm オニグルミに鳥の羽根の重なりのように見える杢が生じており、凹凸があるように感じます。かなり珍しい杢です。このような杢を鶉(うずら)杢と呼んでいます。素材厚が40mmほどあったので、その厚さをいかしてふっくらとした形に仕上げていますが、それがまた羽毛におおわれた鳥の体を連想させます。実のほうは杢のない一般的なオニグルミの柾目材。以下3点は半艶塗装です。
No.516 栃変杢丸形被蓋くり物 サイズ直径116×高さ38×実の深さ25mm トチノキに縮杢が生じていますが、それに加えて樹木が生きて立っていたときに侵入した虫穴からの変色もうねうねと。小さな黒点がなんだか生き物の目のようにも見えます。こういった変わった杢・紋様のことをスポルトと呼んでいます。通常、虫食いや変色は材質がもろくなってしまうのですが、この場合は旋盤加工ができるくらい素地はまだしっかりしていました。実(み)はふつうのトチノキです。
No.517 栃変杢丸形凹面被蓋くり物 サイズ直径111×高さ38×実の深さ23mm 516とは別の板からの木取ですが、丸太は同一のもの。虫穴とそれからの変色が、木地が縮杢であることによって直線状には進まず、うねって入っています。波間に漂うクラゲか、という見立てもできそうです。これはこの「生き物」を消してしまわないようにやや凹んだ形の蓋にしています。側面もいくらか下に絞りこんだ形状です。